2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H02611
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
古田 巧 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (30336656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 祐輔 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (90509275)
浜田 翔平 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (00833170)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カルコゲン結合 / ロジウム / C-H 挿入反応 / 軸性不斉 / テトレル結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室では、縮環構造内に硫黄原子を導入したロジウム二核錯体を合成し、このものが分子内 C-H 挿入反応を高い立体選択性で触媒することを見出している。本錯体は、カルボキシラート部、およびアミド部の硫黄-酸素原子間に複数のカルコゲン結合を形成しており、優れた不斉誘起の主要因であると示唆された。そこで今年度は、酸素やセレンなど種々のカルコゲン元素を持つロジウム二核錯体を合成し、カルコゲン結合が触媒構造や機能にもたらす効果を検証した。 まずロジウム二核錯体の配位子となるビアリールジカルボン酸の構造解析を行ったところ、硫黄やセレンを有するジカルボン酸では、酸素-カルコゲン原子間に働くカルコゲン結合がカルボキシ基の配座制御に寄与することがわかった。一方で酸素原子を有するジカルボン酸では、カルコゲン結合は形成しないものの、カルボニル酸素と炭素原子間にテトレル結合と呼ばれる14族元素とヘテロ原子間に働く非共有結合性相互作用が確認され、カルボキシ基の配座制御に寄与することがわかった。このテトレル結合は硫黄やセレンを有するジカルボン酸においても確認され、カルコゲン結合に加えて付加的に作用することで、カルボキシ基をより強力に配座制御していると推測された。 次いで、これらのジカルボン酸をロジウム二核錯体に誘導し分子内 C-H 挿入反応を検討した。その結果、セレンを有する錯体は硫黄を持つ錯体と同程度の高い立体選択性を示すが、酸素を有する錯体では立体選択性が低下することがわかった。この酸素を有する錯体では、カルボキシラート部は配座制御されるがアミド部の構造制御は不十分で、2種類の配座を与えることがわかった。以上より、硫黄を有するロジウム二核錯体の優れた不斉誘起の主要因が“カルコゲン結合を介した配座制御”であることを実験的に裏付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、硫黄を持つロジウム二核錯体を起点に、酸素や高周期カルコゲン元素に置換した触媒を合成し、カルコゲン結合がその立体構造や触媒活性に与える影響を解析することを目的とした。当初の計画通り酸素とセレンをそれぞれ有する触媒の合成を達成し、分子内不斉 C-H 挿入反応での立体選択性の検討や計算化学によるカルコゲン結合の評価を行うことで、カルコゲン結合による触媒の構造制御が重要な役割を果たしていることを明らにした。そこで今年度は「おおむね順調に進行している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、カルコゲン結合がロジウム二核錯体の構造制御に有効なことを明らかにできたことから、この知見をカルコゲン結合で配座制御された分子認識型触媒の創製に展開する。この分子認識型触媒で糖類の位置選択的アルキル化などを検討する。
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