2021 Fiscal Year Annual Research Report
グライコプロテオミクスによる神経分化の分子基盤の解明と神経変性疾患マーカーの探索
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21H02617
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
川崎 ナナ 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (20186167)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高倉 大輔 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特任教員 (90760231)
大橋 祥子 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特任助手 (00908709)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | グライコプロテオミクス / iPS細胞 / 神経分化 / アルツハイマー病 / バイセクト糖鎖 / OGlcNAc / データ非依存的データ取得法 / LC/MS/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、神経変性疾患などの診断法や治療法の開発に資する研究として、神経変性疾患モデル細胞を用いて、神経分化に伴う糖タンパク質の糖鎖修飾とその機能を解析し、神経変性疾患に係わる糖鎖の構造や糖鎖生合成酵素を明らかにすることである。 令和3年度は、iPS細胞 (iPSC) 由来アルツハイマー疾患 (AD)モデル神経前駆細胞を入手し、神経分化のための条件検討を行った。また、ADとの関係が示唆されているタウタンパク質のO型糖鎖修飾を解析する方法を開発する目的で、データ非依存的(DIA)-MSによるムチン型糖鎖の解析について検討した。すなわち、iPSCを用いてムチン型糖タンパク質のライブラリを構築し、このライブラリがDIA-MSによる定量に利用できることを確認した。 また、我々が既に見出している神経特異的N型糖鎖BA2の機能解析を行った。BA2はN-アセチルグルコサミン (GlcNAc) 5個、マンノース3個、フコース1個からなるバイセクトフコシル2本鎖であり、我々は、ヒトiPSCが神経系細胞に分化する過程で、BA2が成長円錐に存在する軸索反発作用分子とその受容体や神経接着分子に選択的に結合していることを見出している。令和3年度は、軸索伸長におけるBA2の役割を明らかにすることを目的に、神経分化過程にあるiPSCにsiRNAを作用されることで、バイセクト構造形成に不可欠なBeta-1,4-Mannosyl-Glycoprotein 4-Beta-N-Acetylglucosaminyltransferase(タンパク質名:GnT3;遺伝子名:MGAT3)をノックダウンし、その影響を調べた。siRNAを作用させた細胞では、コントロールと比較して、軸索がまっすぐに伸長せず、ネットワークが適切に形成されていない様子が観察され、BA2は神経ネットワーク形成に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、iPSC 由来アルツハイマー疾患ADモデル神経前駆細胞を入手し、神経分化のための条件検討を行った。また、ADとの関係が示唆されているタウタンパク質のO型糖鎖修飾を解析する方法を開発する目的で、DIA-MSによるムチン型糖鎖の解析について検討した。すなわち、iPSCを用いてムチン型糖タンパク質のライブラリを構築し、このライブラリがDIA-MSによる定量に利用できることを確認した。 また、我々が既に見出している神経特異的N型糖鎖BA2の機能解析を行った。BA2はバイセクトフコシル2本鎖であり、我々は、ヒトiPSCが神経系細胞に分化する過程で、BA2が成長円錐に存在する軸索反発作用分子とその受容体や神経接着分子に選択的に結合していることを見出している。令和3年度は、軸索伸長におけるBA2の役割を明らかにすることを目的に、神経分化過程にあるiPSCにsiRNAを作用されることで、バイセクト構造形成に不可欠なMGAT3(タンパク質名:GnT3)をノックダウンし、その影響を調べた。siRNAを作用させた細胞では、コントロールと比較して、軸索がまっすぐに伸長せず、ネットワークが適切に形成されていない様子が観察され、BA2は神経ネットワーク形成に関与していることが示唆された。 令和4年度に実施予定であるDIA-MSによる糖鎖生合成酵素の発現解析の準備を行った。本実験は、神経分化に伴うGnT3およびその他の糖転移酵素群の変動を網羅的に明らかにすることを目的としている。令和3年度は、DIA-MSに必要なライブラリの充実化を行い、定量分析のための細胞の調製を終了した。 以上のように、当初の計画以上に研究は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、前年度最適化した方法を用いてADモデル細胞を調製し、DIA-MSを用いて、O型糖鎖修飾の網羅的かつ定量的解析を行う。また、DIA-MSを用いて、神経分化に伴うGnT3およびその他の糖鎖生合成酵素群の変動解析を行う。これにより、ADとの関連性が示唆される糖鎖や糖転移酵素を絞り込む。 【O型糖鎖修飾について】 ムチン型糖鎖とともにADとの関係が報告されているOGlcNAc修飾を網羅的に解析するために、DIA-MSによるOGlcNAc型糖ペプチド解析法を開発する。モデルとしてOGlcNAc修飾された糖タンパク質(αクリスタリンなど)を用いて、WGAレクチンを利用してOGlcNAc修飾ペプチド濃縮法の最適化を行う。その条件を使ってiPSCとiPSC由来神経細胞などからOGlcNAc糖ペプチドを回収し、ライブラリを作成する。iPSC由来神経細胞のDIA-MSを実施し、既知のタウのOGlcNAc修飾が解析できることを確認する。確認後、ADモデル細胞とコントロール細胞のOGlcNAc修飾の差異解析を行い、AD関連OGlcNAcを特定する。 【糖鎖生合成酵素の変動解析について】 昨年度準備した糖鎖生合成酵素群を含むライブラリと、定量解析のために調製した細胞試料を用いて、DIA-MSによる糖鎖生合成酵素群の定量解析を行う。これにより、神経分化に伴う糖転移酵素群の役割を考察する。また、この方法をADモデル細胞にも実施し、ADと関連性のある糖鎖や糖鎖生合成酵素を抽出する。 令和5年度は、ADとの関連性が示唆された糖鎖や糖転移酵素について、抗体やレクチンを用いたイメージング、ウェスタンブロット、フローサイトメトリなどで検証する。さらに、患者由来血清等を用いて、これらの分子の診断マーカーとしての可能性を検証する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Postsynaptic structures formation of human iPS cell-derived neurons takes longer time than presynaptic formation during in vitro neural differentiation. Molecular Brain.2021
Author(s)
Kazuyuki Togo, Hayato Fukusumi, Tomoko Shofuda, Hiroshi Ohnishi, Hiroyuki Yamazaki, Mariko Hayashi, Nana Kawasaki, Nobuyuki Takei, Takanobu Nakazawa, Yumiko Saito, Kousuke Baba, Hitoshi Hashimoto, Yuko Sekino, Tomoaki Shirao, Hideki Mochizuki, Yonehiro Kanemura
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Journal Title
Molecular Brain
Volume: 14
Pages: 149
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Postsynaptic structure formation of human iPS cell-derived neurons takes longer than presynaptic formation during neural differentiation in vitro2021
Author(s)
Kazuyuki Togo, Hayato Fukusumi, Tomoko Shofuda, Hiroshi Ohnishi, Hiroyuki Yamazaki, Mariko K. Hayashi, Nana Kawasaki, Nobuyuki Takei, Takanobu Nakazawa, Yumiko Saito, Kousuke Baba, Hitoshi Hashimoto, Yuko Sekino, Tomoaki Shirao, Hideki Mochizuki, Yonehiro Kanemura
Organizer
ISSCR/JSRM 2021 Tokyo International Symposium
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