2021 Fiscal Year Annual Research Report
電位依存性イオンチャネルの機能構造と構造間遷移機構の解析による動作機構解明
Project/Area Number |
21H02618
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大澤 匡範 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (60361606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横川 真梨子 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (60648020)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電位依存性イオンチャネル / 機能構造 / 構造生物学 / 動作メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
電位依存性イオンチャネル(VGIC)は、膜電位に応じた特定イオンの膜透過を通じて膜電位を制御し、神経伝達や心臓の拍動を担う膜タンパク質であり、創薬の標的としても重要である。VGICは一般に、膜電位依存的に静止構造・透過性構造・不透過性構造の間を遷移することによりゲートを開閉し、特定のイオンを膜透過させることで膜電位を制御する。しかしながら、これまでに複数の機能構造が原子分解能で明らかになったVGICはなく、膜電位のかかった静止構造や一過的にしか存在しない構造、および、機能構造間の遷移メカニズムは未解明である。 そこで本研究では、化学修飾により未解明である機能構造を安定化する手法を確立し、それぞれの構造の意味を電気生理学的解析により解明するとともに、それらの立体構造をX線結晶構造解析あるいはクライオ電子顕微鏡により原子レベルで明らかにする。同時にNMRによりそれらの間の構造遷移を解析することにより、VGICの動作メカニズムを解明することを目的とする。 今回、解析対象としているVGICについては、KVではKv1.2-2.1キメラ、hERGおよびhERGの類縁タンパク質EAGの立体構造などが報告されているが、いずれも透過性構造であった(透過性構造に阻害剤が結合しているものを含む)。同一チャネルで複数の機能構造が解明された例は無く、静止膜電位下の構造や、準安定的で一過的にしか現れない構造は未解明である。本研究は、未解明である機能構造を化学修飾などで安定化することにより構造解析可能とし立体構造を解明するとともに、NMRにより構造遷移メカニズムを明らかにするものであり、従来の構造生物学とは一線を画すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、電位依存性K+チャネルKvAPの電位センサードメイン内の2か所にCys変異を導入し両者をSS結合で固定化し膜電位依存的に形成される各機能構造を安定化する目的で、25種類のダブルCys変異体を調製し、SS結合系性能を評価したところ、10変異体において膜電位非存在下であってもSS結合がおおむね形成されることを見出した。そのうち5変異体については、SS結合形成率がほぼ100%であった。これらは、すでに構造解析がなされている電位のかかっていない状態のKvAPの電顕構造ではSS結合が形成できない距離にあるものが4個含まれていることから、電位センサーの異なるコンホメーションがSS結合により安定化されたことが示唆された。 そこで、これらの5変異体が実際にチャネルとして機能するかどうか、どのような期の状態を反映した構造であるか、電気生理学的に調べる実験に着手した。これまでに野生型のKvAPで電気生理解析が可能であることを確認した。今後、変異体の解析を進める。 同時に、5変異体の構造生物学的解析を進めるために、試料の大量調製法の確立を試みている。結晶化ならびに電顕での予備実験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに同定したKvAPの5変異体について、電気生理学的手法による機能解析を行う。これまでにカエルの卵母細胞にKvAPを発現させて電気生理学的解析を行おうとしたが、KvAPを卵母細胞に発現させることが困難であった。そこで、大腸菌で発現し精製したKvAPをリポソームに再構成した状態で電気生理学的解析を行うこととした。野生型KvAPの電流が観測できたことから、今後、この手法を5変異体に適用することにより、各変異体の機能状態を明らかにしていく。 同時に、5変異体の大量調製法を確立し、結晶化・X線結晶構造解析、ならびに、クライオ電子顕微鏡での解析を進めていく。この際に、適切な界面活性剤を探索していく。また、機能構造間の動的メカニズムの解明のために、NMRによる直接観測を試みる。
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Research Products
(19 results)
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[Presentation] Gating-modifier toxin APETx1による電位依存性カリウムイオンチャネルhERG阻害機構の解析2021
Author(s)
松村 一輝, 下村 拓史, 久保 義弘, 岡 貴之, 小林 直宏, 今井 駿輔, 簗瀬 尚美, 秋元 まどか, 福田 昌弘, 横川 真梨子, 池田 和由, 栗田 順一, 西村 善文, 嶋田一夫, 大澤匡範
Organizer
第21回日本蛋白質科学会年会
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