2021 Fiscal Year Annual Research Report
Gタンパク質共役型受容体b2ARのシグナル選択性を制御する動的構造基盤の解明
Project/Area Number |
21H02619
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
今井 駿輔 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (20894413)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | GPCR / 溶液NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
● GPCRの活性の比較 Gタンパク質共役型受容体 (GPCR) の一種であるβ2アドレナリン受容体 (b2AR) の、バランスリガンドまたはバイアスリガンド結合状態におけるシグナル伝達活性を比較するアッセイを行った。b2ARのリガンドであるisoetharineは、バランスリガンドであるisoproterenolにエチル基が付加した類縁体であるが、アレスチン経路の活性化能は変わらずGタンパク質の活性化能が低下するアレスチンバイアスリガンドである。GTPターンオーバーアッセイの結果、isoetharine結合状態のb2ARのGタンパク質活性化能はisoproterenol結合状態と比較して88%に低下することが定量的に示された。 ● 各リガンド結合状態におけるロイシン残基由来NMRシグナルの帰属 ロイシン選択的15N標識b2ARを調製し、isoetharine結合状態およびisoproterenol結合状態における1H-15N TROSYスペクトルを測定し、観測されたシグナルを帰属した。その結果、両状態間においてL163, L167, L212, L287などのリガンド結合部近傍の残基に化学シフト変化があることが明らかとなった。また、アラニンメチル選択的13C標識b2ARを調製し、isoetharine結合状態およびisoproterenol結合状態におけるメチルTROSYスペクトルを測定し、観測されたシグナルを帰属した。両者の比較の結果、A134やA226などの細胞内側の残基に化学シフト差が観測され、リガンドの違いが細胞内側に伝播していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究が計画通り順調に進展していることに加えて、本研究にて確立したアッセイ法とNMR法を用いて、他のGPCRであるμオピオイド受容体(MOR)のシグナル伝達活性と構造の相関解析を行い、GPCRのリガンド結合部位以外に結合してそのシグナル伝達活性を変調するアロステリックモジュレータの作用機序を明らかにすることに成功したため。この成果は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)誌に採択された(Kaneko S, Imai S, .., Shimada I. PNAS (2022) 119 (16) e2121918119)。
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Strategy for Future Research Activity |
● 各リガンド結合状態におけるb2ARの動的性質の解析 バランスリガンド結合状態とバイアスリガンド結合状態におけるNMR運動性解析を行い、どの部位においてどのようなタイムスケールの運動性が存在するのかを比較する。 ● 各リガンド結合状態におけるb2ARの常磁性緩和促進効果の解析 各リガンド結合状態における動的構造を可視化するために、b2ARに部位特異的なスピンラベル標識を施し、Leu残基由来NMRシグナルに観測される常磁性緩和促進効果の解析を行う。バランス完全作動薬formoterol結合状態における動的構造の可視化に用いたCys変異体を使用する他、必要に応じて他の部位にスピンラベルを導入するためのCys変異体も調製し、分子全体の動的構造を可視化するのに十分な数の構造情報を取得する。
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