2022 Fiscal Year Annual Research Report
Gタンパク質共役型受容体b2ARのシグナル選択性を制御する動的構造基盤の解明
Project/Area Number |
21H02619
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
今井 駿輔 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (20894413)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | GPCR / 溶液NMR / バイアスリガンド |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに帰属を行ったLeuのアミド基由来シグナル、Alaのメチル基由来シグナルの解析の結果、バランスリガンドであるisoproterenol結合状態とアレスチンバイアスリガンドであるisoetharine結合状態ではリガンド結合部近傍および細胞内側の残基に化学シフト差が観測されることが示されていた。今年度は、メチオニンメチル基の解析を行った。その結果、両リガンド結合状態では膜貫通領域中央に存在するM82に0.06ppmの顕著な化学シフト変化があることが示された。これまでのバランスリガンド結合状態での解析から、M82を含む領域はNMRの化学シフト差よりも速いタイムスケールと遅いタイムスケールの化学交換が関わる3状態間の構造平衡にあり、その存在比によって活性を規定することが示されている。以上のことから、isoetharineは、リガンド結合部、膜貫通領域中央部、細胞内側領域に渡る分子全体の構造平衡をisoproterenol結合時とは変調することによってバイアスシグナル活性を発揮することが示された。これまでに報告されているb2ARの立体構造解析の結果から、b2ARへのisoproterenolおよびisoetharine結合状態では、isoetharineのエチル基が細胞外側に突出し、F193と接触すると予想される。そこで、この接触を軽減することを目的としてF193をTrpに置換したF193W変異体を作製し、そのGタンパク質活性可能を解析したところ、F193W変異体は、isoproterenol結合状態においても野生型のieostharine結合時と同等のGタンパク質活性化能しか示さないことが明らかとなった。このことは、b2ARのバイアスシグナル伝達に、リガンド結合部位細胞外側の領域が関わることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Isoproterenol結合状態とisoetharine結合状態においてb2ARの立体構造に大きな差があることを示すような化学シフト差がLeu, Ala, Metのいずれにおいても観測されなかった一方で、構造平衡を反映するプローブであるM82に顕著な化学シフト差が見出されたことから、両リガンドの活性の際が構造平衡の変調に起因することが明らかとなった。さらに、リガンド結合部位の構造とリガンドの分子構造を比較することによって、isoproterenolとisoetharineの活性の差に関わる重要な残基F193を同定することに成功したため、研究は当初計画通り順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
リガンドがb2ARの動的構造を変化させる機構を明らかとするため、F193をTrp以外の残基にも変異させ、活性やNMRスペクトルの違いを評価する。これらの情報を統合することによって、リガンド結合によるb2ARのどのような変化が細胞内側の動的構造を変化させるのか、その機構を解明する。さらに、その理解の実証のため、変異導入などによって予想される動的構造平衡の変化とそれに対応するシグナル選択性が観測されることを確認し、これを制御するための方針を示す。
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