2022 Fiscal Year Annual Research Report
セラミド代謝異常によるニーマン・ピック病C型の病態発症機構の解明と創薬への応用
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21H02631
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中村 浩之 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (20447311)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | セラミド代謝 / ニーマン・ピック病C型 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニーマン・ピック病C型 (NPC) は中枢神経系障害および肝機能障害を主徴とする遺伝病であり、国の難病に指定されている。NPCの発症率は12万人に1人であり、多くの患者が幼少期に発症し、10歳前後で亡くなられる。NPCは細胞内コレステロール輸送を担う蛋白質 (NPC1またはNPC2) の欠損が原因で、細胞内にコレステ ロール及びスフィンゴ糖脂質が蓄積する。NPCの唯一の治療薬ミグルスタットはスフィンゴ糖脂質合成酵素の阻害薬であり、脳内のスフィンゴ糖脂質レベルを減少させ、神経脱落を抑制する。しかしながら、治療効果は限定的であり、より有効な治療戦略の開発が望まれている。本研究ではこれまでに、セラミド代謝酵素の阻害がNPCの治療につながることをNPC細胞やNPCマウスを用いた解析により見出している。そのため、本研究ではセラミド代謝酵素とNPC発症との関連性を解析し、NPCの病態発症機構を解明すること、また、セラミド代謝酵素を阻害する化合物の開発を試み、NPC治療薬を創出することを目指して研究を行っている。本年度は下記の研究成果を得た。 ・本研究ではこれまで、NPCにおける中枢神経系障害やグリア細胞活性化に対するセラミド代謝酵素の関与をマウスレベルで行ってきた。今年度は、グリア細胞(ミクログリアおよびアストロサイト)の培養細胞において、セラミド代謝酵素がグリア細胞の活性化に関与することを明らかにした。 ・NPCマウスのセラミド代謝酵素を阻害すると、肝機能障害が抑制されることが明らかになった。 ・セラミド代謝酵素を阻害する新規化合物を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスおよびヒトにおける病態解析、およびスクリーニングが計画通りに進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、NPC患者由来iPS細胞を樹立し、神経細胞に分化させることに世界で初めて成功している。この患者由来神経細胞のセラミド代謝酵素を阻害するとコレステロール蓄積が軽減することも明らかになっている。さらに、NPC患者由来のiPS細胞を神経細胞に分化させる際、健常人に由来するiPS細胞に比べて分化しにくい (障害を受けやすい) ことを見出している。そこで、分化障害が生じるメカニズムを解析し、また 、セラミド代謝酵素の阻害が分化障害を改善するかどうかを検証する。 また、セラミド代謝酵素を阻害する新規化合物の構造最適化も行う。
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