2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H02641
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
玉井 郁巳 金沢大学, 薬学系, 教授 (20155237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒川 大 金沢大学, 薬学系, 准教授 (40709028)
若山 友彦 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (70305100)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 尿酸 / トランスポーター / 高尿酸血症 / 痛風 / 受容体 / センサー / CD38 / NDFIP1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、尿酸の生理・病理作用を媒介する“尿酸センサー”を同定し、血清尿酸値(SUA)変動に伴う生体応答の全容解明を狙っている。即ち、尿酸は高等哺乳類特有に高濃度で存在し、SUAは厳密に調節されているが、生理作用の説明は、高尿酸時による尿酸塩の結晶化による炎症反応(痛風)および尿酸分子の化学的な酸化・抗酸化作用にとどまる。そこで、尿酸を感知して生体応答を司る“尿酸センサー”となるタンパク質が存在すると考え、その分子的実体の同定を進めている。予試験で見つけられている、尿酸センサー候補となった尿酸結合タンパク質であるCD38タンパク質について、R3年度には新たな知見が得られた。CD38は生体の恒常性維持に必須な補酵素NADの分解に関わる酵素であるが、尿酸はCD38活性に影響することでNADを調節していることを見い出し、学術論文として公表するに至った。具体的には、尿酸一ナトリウム塩(MSU, monosodium urate)から生じる尿酸結晶は痛風発作に至る炎症を誘発する。本研究では、MSUがCD38を活性化(発現誘導)し、その結果NAD分解が促進され、同時に炎症性サイトカインが誘導されることをin vitro試験系で得た。MSUによる炎症は、NLRP3インフラマソームにより説明されるが、MSU刺激により生じるNAD量減少メカニズは未解明のままであった。得られたCD38の活性化は、新たな炎症抑制作用や尿酸関連疾患の詳細に迫る知見を得ることができる成果となった。 本成果は、当初計画していた尿酸センサーとしてCD38が働いていることを示すものであり、CD38活性調節による尿酸の病理・生理作用の詳細をさらに進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
尿酸センサーとして解析したCD38について、全く新たな知見が得られた。CD38は生体の恒常性維持に必須な補酵素の分解に関わる酵素として機能するが、尿酸はCD38活性に影響することでNADを調節していることを見い出し、学術論文として公表するに至った。具体的には、尿酸一ナトリウム塩(MSU, monosodium urate)から生じる尿酸結晶は痛風発作に至る炎症を誘発する。MSUはCD38を活性化することでNAD分解を誘発し、同時に炎症性サイトカインの誘導を引き起こすことを見い出すことができた。MSUによる炎症は、NLRP3インフラマソームにより説明されているが、MSUに引き続いて生じるNAD量減少機構は未解明のままであった。本検討で得られたCD38の活性化は、一部の経路が不明であるNLRP3インフラマソームの途中過程を説明できる発見であり、新たな炎症抑制作用や尿酸関連疾患の詳細に迫る知見となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに見出した尿酸センサー候補タンパク質の役割ならびに選択的尿酸排泄促進薬(SURI)の作用機構を調べる。尿酸センサー候補タンパク質としてCD38ならびにNDFIP1に着目する。さらに、新規に上市されたSURIが何故従来薬に比べて選択性が高いかについての検討を並行して行う。 1)尿酸センサー候補タンパク質であるCD38に着目した検討を進める。前年度までに尿酸塩結晶は、CD38タンパク質発現量を増大させることをin vitro培養細胞系で見出した。したがって、尿酸塩結晶により誘導されるCD38は一つの”尿酸センサー”となり、既に知られているNLRP3インフラマソームと関連することが示唆された。本仮説を様々な組織由来炎症性細胞で検証するとともに、個体レベルでのCD38に対する尿酸塩結晶の作用を検証する。 2)尿酸センサー候補として、CD38以外についても検討を進める。尿酸結合タンパク質としての候補はNDFIP1である。NDFIP1は生理・病理学的過程で働いている重要なタンパク質として知られている。また、脂質代謝などとも関連すること、ならびに高尿酸と関連する疾患として脂質代謝異常も示唆されていることから、尿酸センサーの一つとして調べる。具体的には、NDFIP1と尿酸との結合性ならびに生体反応への影響の詳細を調べる。 3)血清尿酸値降下薬の作用機構の解明を行う。日本発の新規選択的尿酸排泄促進薬(SURI)が上市された。尿酸再吸収に働くトランスポーターURAT1阻害作用を有するが、阻害作用の詳細は不明である。URAT1上での尿酸とSURIの結合部位をインシリコ予測し、阻害機構と選択性を調べる。
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Research Products
(4 results)