2021 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanics of brain development: elasticity, residual tissue stress, and mechanosensing
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21H02656
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮田 卓樹 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (70311751)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 器官形成 / 形態形成 / 力学的要因 / 張力 / 圧縮力 / 神経前駆細胞 / 大脳原基 / 脳室 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「脳発生の組織・細胞メカニクス:弾性・残留応力の 意義と 生成・感知の分子機構」は,「胎生早・中期(頭蓋骨形成前の)脳胞壁」に注目し,壁内で どんな局所形態に どんな向きの「押し」と「引っ張り」の力が生じ,それらがどう組み合わさることで,壁が 頑強さ・適正曲率を持ちつつ 劇的な成長・形態変化を果たし得るのか を理解するために,①脳壁内細胞の形態 および 分布・集簇性がもたらす 局所および壁全体の 力学的特性,② 弾性線維関連分子群の役割,③ 機械刺激センサー の役割,について「残留応力解放試験」を基軸とする複合的解析で明らかにすることを目指している.初年度は,項目「①」に関して,以下の2つの論文の発表に至った.(1)大脳の壁には一部、脳室に向けて凸な面がある.凹と凸で,力学的特性を原子間力顕微鏡AFM,レーザー焼灼により定量的に比較した.凸部では凹部におけるよりも壁内面の弾性率・硬度が低かった.この理由として,神経幹細胞の内端の密度,Fアクチンの集積度の2点で凹部>凸部という差が認められた.一方,受動的な盛り上がりが凸をもたらすと示唆された(Nagasaka and Miyata, Front. Dev. Cell. Biol. 2021).(2)骨ができ始める前の胎生期の頭部において,頭皮の弾性・収縮性が拡張・壁肥厚を進める脳胞を押し付け(77-93 Pa),折り畳む・曲げると分かった(Tsujikawa et al., Dev. Dyn. 2022).また頭皮による押し込みは,脳脊髄液の分布・恒常性にも影響を及ぼしていると分かった.脳原基による頭皮の伸展は,頭皮細胞の増殖を促すと分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「①脳壁内細胞の形態 および 分布・集簇性がもたらす 局所および壁全体の 力学的特性」に関しては,(1)大脳の壁には一部、脳室に向けて凸な面がある.凹と凸で,力学的特性を原子間力顕微鏡AFM,レーザー焼灼により定量的に比較した.凸部では凹部におけるよりも壁内面の弾性率・硬度が低かった.この理由として,神経幹細胞の内端の密度,Fアクチンの集積度の2点で凹部>凸部という差が認められた.一方,受動的な盛り上がりが凸をもたらすと示唆された(Nagasaka and Miyata, Front. Dev. Cell. Biol. 2021).(2)骨ができ始める前の胎生期の頭部において,頭皮の弾性・収縮性が拡張・壁肥厚を進める脳胞を押し付け(77-93 Pa),折り畳む・曲げると分かった(Tsujikawa et al., Dev. Dyn. 2022).また頭皮による押し込みは,脳脊髄液の分布・恒常性にも影響を及ぼしていると分かった.脳原基による頭皮の伸展は,頭皮細胞の増殖を促すと分かった.これら以外に,ニューロンが圧縮されて詰め込まれることによって,隣接・伴走するファイバー(脳原基壁の中で周方向に走る軸索,および壁の内外面をつなぐ形態の神経幹細胞・放射状ファイバー)が受動的に引き延ばされることを,外科的な実験群の組み合わせによって見出した(論文投稿準備中).「② 弾性線維関連分子群の役割」について,注目分子の発現解析,阻害剤による実験に続いて,i-GONADO法によるノックアウト実験を力学的実験と組み合わせて実施している.「③ 機械刺激センサー の役割」についても,注目分子の発現パターン把握,コンディショナルノックアウトマウス解析,カルシウムイメージングなどが順調に進み,力学的な解析も進みつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
「①脳壁内細胞の形態 および 分布・集簇性がもたらす 局所および壁全体の 力学的特性」については,(1)脳室(脳原基壁の内面が対峙する液腔)の内圧の測定を目指す.自作のマノメータによって測定し,頭皮除去によって脳室内圧が下がるか,頭皮の収縮力を薬剤(アクトミオシン阻害剤)で弱めると脳室圧が下がるかどうか明らかにする.また,脳組織体積の増減をもたらす遺伝子操作,脳脊髄液産生を阻害する薬剤などと組み合わせて,胎生期の脳室内圧がいかにして成立しているかを明らかにする.(2)壁が曲がる際のちからの測定を目指す.プラーで作成したガラス針のバネ定数を,電子秤を用いて求め,その針で「脳原基の壁が曲がってくる」のを受けとめ,針の曲がり度観察から「曲がりの力」を求める系を構築中.それが達成できれば「断面からの中身の溢れ出し・盛り上がり(壁が曲がるときに同時に起きる)」に関する力計測にも挑む.これらの定量データを利用してシミュレーションの構築を目指す.「② 弾性線維関連分子群の役割」については,引き続きノックアウト実験の解析を進め,分子メカニズム理解を得る.「③ 機械刺激センサー の役割」についても,コンディショナルノックアウトマウス解析を力学的手法で行い,機能的な理解を得る.
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Research Products
(6 results)