2021 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of Circadian ordering system during the developmental process in mammals
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21H02664
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
八木田 和弘 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90324920)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 概日リズム / 時計遺伝子 / 発生 / 体節形成 / ガストロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
体内時計は発生期に形成される細胞自律的プログラムであり、発達期から老年期まで一生にわたって地球の自転に伴う周期的環境変化への適応を通して個体機能の動的恒常性を担う。近年、体内時計は多岐にわたる生理機能の恒常性制御を通し、生涯にわたる健康にとって必要不可欠な生命機能であることが明らかとなってきた。しかし、特に発生発達期のリズム撹乱の影響などは社会的にも注目されているがブラックボックスのままほとんど研究が進んでいない。本研究では、哺乳類発生過程における体内時計の形成に伴う概日時間秩序の生成機構に着目し、日常生活の中で生じる健康問題まで貫く体内時計による動的恒常性制御の生物学的ロジックを理解することを目指す。 まず、Hes7遺伝子のリズムを指標にして、体内時計の鍵因子である転写因子複合体CLOCK/BMAL1が分節時計のリズムに及ぼす影響について、ES細胞からin vitroで分化誘導した胚オルガノイド系を用いて検討した。誘導未分節中胚葉(induced PSM, iPSM)、および、体節形成が再現できる胚オルガノイドであるgastruloid(ガストロイド:人工擬似胚)を用い、体内時計の鍵転写因子CLOCK/BMAL1の発現誘導によるHes7リズムおよび体節形成への影響を解析した。その結果、CLOCK/BMAL1の発現誘導によりHes7のリズム消失とともに分節構造の形成も消失することが確認された。 以上の結果から、胎児期の前半までは機能せず抑制されている体内時計の鍵因子CLOCK/BMAL1を体節形成期に強制的に発現することで、分節時計に干渉し2時間周期のリズム制御を破綻させ体節形成を阻害することが明らかになった (PNAS, 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究はこれまで代表者の八木田が独自の発見に基づいて体系的に進めてきた研究であり、長期的視点に立って一つ一つの課題設定を合理的な根拠に基づいて研究を進めている。したがって、本研究の目標である、概日リズム制御系の成立機構の理解に向け、成果を上げることができている。特に、発生過程における体内時計の抑制の意義については、これまで全くわかっていなかったが、体節形成におけるもう一つの生物時計「分節時計」との関連に着目し、両者の関係を明らかにするためのin vitro体節形成再現系であるガストロイドを用いたリアルタイム解析系を速やかに確立することができた。この系を用い、体内時計の鍵因子であり発生早期には厳密に抑制されているCLOCK/BMAL1の影響に着目し、Tet-Onシステムを用いて発現誘導した時のHes7リズムおよび体節形成を詳細に観察した。その結果、CLOCK/BMAL1が機能することでHes7遺伝子発現に強く干渉し、2時間周期の分節時計のリズムが消失するとともに体節形成の阻害されることが明らかとなった。これらの結果は、発生過程において、24時間周期の概日リズムと2時間周期の体節形成リズムが共存できないことを示しており、発生学における全く新しいリズム制御の意義を提示することができた。これは、予定以上に研究が順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
発生発達期における体内時計の形成が生後の生体の恒常性維持機構の成立にどのような役割を果たしているのかを明らかにする。体内時計による概日リズム制御系は生体の動的恒常性を担っており、体内時計を介した遺伝子発現ネットワークや代謝ネットワークがその基盤であると考えられている。そこで、本研究では、発生過程における体内時計の形成前後を通して、遺伝子発現ネットワーク成立プロセスを解析し、時系列に沿った状態遷移過程を定量的に記述する。 普遍的細胞機能である体内時計制御系は、階層を超えて個体機能へと表出するとともに外部環境との適合状態を逆に細胞機能にまで反映させる「貫階層的な生体制御システム」であることから、環境要因が寄与する「状態遷移」を細胞内で生じる分子機構の変容として定量的に記述できる。これは、環境要因による多因子疾患の発症プロセスを可視化できる他にない特徴である。さらに、体内時計制御系の場合環境要因は光を用いた明暗周期の操作・摂動が可能であることから、環境要因による疾患発症メカニズム解明の鍵となる「状態遷移」の再現モデル系を構築できる。我々は、これらを実現した「マウスコホート系」の構築を通し、環境適応を担う体内時計制御系の成立過程を解析する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] The clock modulator Nobiletin mitigates astrogliosis-associated neuroinflammation and disease hallmarks in an Altzheimer's disease model.2022
Author(s)
Wiroanto M, Wang C-Y, Kim E, Koike N, Gomez-Gutierrez R, Nohara K, Escobedo Jr G, Choi JM, Han C, Yagita K, Jung SY, Soto C, Lee HK, Morales R, Yoo S-H, Chen Z
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Journal Title
FASEB J
Volume: 36
Pages: e22186
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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