2021 Fiscal Year Annual Research Report
Physiological significance and structure of TRP channel/ANO1 complex, and its clinical application
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21H02667
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
富永 真琴 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 教授 (90260041)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | TRPチャネル / ANO1複合体 / カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
TRPチャネルは高いCa2+透過性を有しているが、その生理的意義は十分には明らかでない。興奮性細胞では陽イオンの流入による脱分極が電位作動性Na+チャネルを活性化して活動電位が起こるが、非興奮性細胞ではCa2+流入による様々なCa2+依存性の細胞応答が起こるとされている。これまで、TRPV4チャネルとCa2+活性化Cl-チャネルanoctamin1 (ANO1)が形質膜で複合体を形成し、機能連関によって水流出をもたらすこと、さらにTRPV1, TRPA1/ANO1複合体が感覚神経で脱分極の促進から痛み増強をもたらすことを報告してきた。2021~2022年度は、TRPM2がANO1に加えてCa2+活性化K+チャネルのIKCa1とも機能連関している可能性を検証した。HEK293細胞にTRPM2とIKCa1を共発現させると、TRPM2刺激で先ずTRPM2によると思われる陽イオンの内向き電流が観察され、遅れて逆電位が大きくシフトした。IKCa1によると思われるK+電流の活性化と考えられた。この電流はTRAM-34で抑制されたことから、IKCa1の活性化を確認した。また、このTRPM2-IKCa1の活性化によって細胞容積が減少した。TRPM2活性化によって、ANO1, IKCa1が活性化してCl-, K+が流出し、それが駆動力となって水チャネルから水が細胞外に流出したものと考えられた。マウス脳から単離したミクログリアでもTRPM2の活性化によってK+電流が活性化して、TRAM-34で抑制された。また、マウス脳ミクログリアでも、TRPM2の活性化によって細胞容積が減少し、HEK293細胞で観察されたのと同じ現象が起こっているものと推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TRPV3とANO1の機能連関を明らかにすることができた(2023年論文発表)。これまでに、TRPV1, TRPV3, TRPV4, TRPA1というCa2+透過性の高いTRPチャネルとANO1の機能連関を証明してきた。これは、研究室の研究対象である温度感受性TRPチャネルがもつ高いCa2+透過性の生理的意義をある程度説明できるものと考えられる。感覚神経においてはCl-流出による脱分極の増強から痛みや痒みの増強、腺分泌細胞ではCl-流出をdriving forceとした水分泌(脳脊髄液、唾液、涙)の増大、表皮ケラチノサイトでは増殖・移動の促進による早い創傷治癒に関わっていることが明らかとなった。他にもCa2+透過性の高いTRPチャネルは多く、すでに明らかにしたTRPV1, TRPV3, TRPV4, TRPA1でも他の生理機能に関わっている可能性がある。また、ANO1と行動を共にするK+チャネルはIKCa1以外にもあるかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
TRPチャネルを介して流入したCa2+の作用として、Ca2+活性化K+チャネルがANO1と複合体を形成してCl-移動に伴って起こるK+移動を担っているものと考えてられる。このTRPM2/ ANO1/ IKCa1の3者の複合体の生理的意義を明らかにしたい。Ca2+活性化K+チャネルの活性化はインフラマソームの活性化を惹起することが知られており、マウス脳内ミクログリアでサイトカイン産生が変化しているかどうかを生化学的に検討する。Ca2+活性化K+チャネルの活性化は水流出を介して脳内ミクログリアの移動方向に対して尾部の分離収縮に寄与すると考えられることから、脳内ミクログリアの温度依存性の運動性へのCa2+活性化K+チャネルの関与を、タイムラプス顕微鏡を用いて薬理学的に検討する。
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