2021 Fiscal Year Annual Research Report
日本人集団ゲノムワイドクロマチン相互作用情報と構造多型との関連解析と疾患要因探索
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21H02681
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長崎 正朗 京都大学, スーパーグローバルコース医学生命系ユニット, 特定教授 (90396862)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河合 洋介 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 副プロジェクト長 (30435515)
大川 恭行 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (80448430)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 構造多型 / 長鎖型シークエンサ / 大規模ゲノム情報解析 / クロマチン構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の研究の進展により、DNAの核内の配置(クロマチン相互作用に伴う立体構造)が転写制御、複製、DNA修復など色々な影響を与えること、また、構造は細胞種特異的であることが知られている。一方、長鎖型シークエンサの開発が進み、短鎖型シークエンサでは困難であった全ゲノムレベルでの構造多型のプロファイルの取得が可能となっている。また、クロマチン相互作用は遺伝的な要因によって個人差があることが知られている。さらに、その差が疾患に影響を与える報告もある。そこで本研究では「ゲノムワイドクロマチン相互作用を取得することができるHi-C技術と長鎖型シークエンサによって得られる構造多型プロファイルを組み合わせることで、日本人集団におけるゲノムワイドクロマチン相互作用の差異の検討をするとともに、同集団中に含まれる頻度5%以上の一塩基多型、および、構造多型のうちどの多型がこの染色体上の各クロマチン相互作用にどのように影響を与えるのか、さらに、その多型が疾患にどのように影響をしているのかについて検討するとともに、これらの公開可能なデータベースを構築すること」を目的とし本課題を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は当初計画していた1-7の課題のうち推進予定としていた【課題1】【課題2】【課題3】【課題7】について計画通りに進めた。 【課題1】大川が試験的に検証を行った実験プロトコルに基づいて、凍結保存をしている不死化B細胞株を適宜細胞培養し、100検体のATAC-Seqのライブラリの構築、大川が管理する NovaSeq を用いて大規模シークエンス情報を取得した。さらに、得られた情報について、長﨑がカスタムパイプライン構築し、ゲノムワイドのオープンクロマチンの全ゲノム領域のプロファイルの取得を行った。さらに、日本人集団内でのプロファイル比較を行った。 【課題2】河合と長﨑が試験的に構築を行った長鎖型シークエンサの構造多型プロファイルの同定のための解析パイプライン (HiCanu / HifiAsmなどを利用) を実行することで、【課題1】のデータと統合解析をするための構造多型プロファイルを取得した。 【課題3】国際1000人プロジェクトなどで公開されているSNVなどの情報を用いて、【課題1】で得られた構造多型プロファイルとの関連解析の解析の着手をおこなった。また、公開データベースの大規模CTCF領域解析情報などを整理し得られたATAC-Seqのオープンクロマチン情報とHiCの情報との関係性の整理についても着手をした。 【課題7】ヒトの希少疾患を中心とした変異、構造多型との関係を整理した国際データベースClinVar (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/clinvar/)、および、ヒト疾患・形質と変異との関連解析を収集した国際データベース GWASCatalog (https://www.ebi.ac.uk/gwas/)に登録されている変異情報の整理を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は以下の課題を進める。【課題1,2】前年度に続き解析パイプラインの精度向上を他の課題の解析結果をフィードバックすることで必要に応じて行う。【課題3】令和3年度の関連解析の結果について整理をすすめ【課題6】のデータベースとして利用できる体制を進める。【課題4】【図1(b)】に示すようなホモ欠失を中心とした構造多型を重点的に検証する(ヘテロ欠失に比べてクロマチン相互作用の変化の影響が把握しやすいため)。その後、ヘテロ欠失に対しての影響がホモ欠失で想定されるプロファイルの変化を含んだ変化になっているかを検討することで、ヘテロ欠失しか集団中で観測されていない欠失についても拡大し、クロマチン相互作用の評価ができるようにモデルの拡張を進める。同成果を【課題6】のデータベースとして利用できる体制を進める。【課題5】【課題2】で得られたプロファイルのうち、逆位およびコピー数多型とクロマチン相互作用の変化についての調査に着手する。 【課題6】【課題3】【課題4】の結果をデータベースとしてまとめる。【課題7】【課題6】のデータベースと昨年度に進めていたGWASで得られる変異情報、希少疾患で得られる変異情報との関係を比較することで、クロマチン相互作用に影響を与えるSNV、構造多型との比較調査を行う。また、興味深いクロマチン相互作用の変化については、必要に応じて、大川と実験的にトランスクリプトームや他のレイヤーでの細胞の状態を取得することで追試するなどの検討を開始する。
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