2022 Fiscal Year Annual Research Report
自然リンパ球特異的mRNA代謝による病態制御機構の解明
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21H02707
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
海老原 敬 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20374407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久場 敬司 秋田大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (10451915)
立松 恵 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (70725605)
高須賀 俊輔 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (90375262)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自然リンパ球 / NK細胞 / 転写後調節 / mRNA代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然リンパ球(ILC: Innate lymphoid cell)は、初期の免疫応答を担う重要な細胞であり、ヘルパーサイトカイン産生を担うヘルパー自然リンパ球(ILC1、ILC2、ILC3)と細胞障害活性をもつナチュラルキラー細胞(NK細胞)に分類される。ILC1やNK細胞は抗腫瘍免疫や抗ウイルス免疫を、ILC2はアレルギー炎症や抗寄生虫免疫を、ILC3は病原性大腸菌等の細胞外病原体に対する免疫を、それぞれ誘導する。本研究では、ILCサブセットのmRNA転写後機構を明らかにすることを目的とする。 哺乳類細胞のmRNA転写後調節のなかで最終的なタンパク質発現に最も重要な機構はポリAデアデニレーションによるmRNA代謝経路と言われている。そして、哺乳類細胞におけるポリAデアニレーションで中心的役割を持つのがCCR4-NOT複合体である。ILCのmRNA代謝経路を阻害するために、CCR4-NOTのコアユニットであるCnot3の欠損誘導を行ったところ、Cnot3が各組織のILC維持に必要なこと、Cnot3がILCサブセット決定機構を制御することが分かった。現在まで、Cnot3欠損によって誘導されるILCサブセット(脾臓NK細胞、肺ILC2、消化管ILC2/ILC3)特異的トランスクリプトーム変化の解析や、Cnot3に結合するRNAの網羅的解析が終了している。また、抗腫瘍免疫、抗寄生虫感染症免疫、抗細菌消化管免疫誘導において、ILCのCnot3が重要な機能を持っていることも明らかになった。さらに解析を行い、ILCサブセット特異的mRNA代謝機構の全貌を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに、CCR4-NOTのコアユニットであるCnot3の欠損誘導(Cnot3f/f: IL7Ra-Cre)を行ない、Cnot3が各組織のILCの維持に必要なこと、Cnot3がILCサブセット決定機構を制御することが分かった。そこで、Cnot3を介したILCサブセット決定機構を明らかにするために、Cnot3f/f: IL7Ra-Creマウスの脾臓NK細胞、肺ILC2、消化管ILC2やILC3を用いて、bulk RNA-seqを行い、Cnot3が結合するmRNAを解析するために、RIP-seqを行った。結果として、ILCサブセット特異的mRNA代謝アトラスが完成した。また、ILCサブセット特異的Cre(ILC特異的Id2-Cre-ETR2, ILC1特異的NCR1-Cre, ILC3特異的RORC-Cre)マウスを用いてCnot3の欠損を誘導し、腫瘍モデル、寄生虫感染モデル、病原性大腸菌感染モデルを試みた。いずれのモデルでも、ILCにおけるCnot3の欠損により病勢が悪化した。
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Strategy for Future Research Activity |
抗腫瘍免疫、抗寄生虫感染症免疫、抗細菌消化管免疫誘導において、ILCサブセットのCnot3がどのような機能的役割を果たすのか、その詳細を明らかにする。ILC2特異的Cre(NMUR1-Cre)が、昨年度報告されたため、現在入手中である。入手次第、ILC2特異的Cnot3欠損誘導を行い、ILC2特異的なCnot3の機能を明らかにする。また、今までの研究により、ILCサブセットの分化決定機構にCnot3が重要な機能を持つことが分かった。Cnot3自体には、RNA結合能がないため、ILC分化決定に重要な機能をもつRNA結合タンパク質の存在が示唆される。この分子の同定を行うために、Cnot3に結合しているタンパク質やTarget mRNAに結合しているタンパク質を網羅的に解析する予定である。
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