2021 Fiscal Year Annual Research Report
脳Treg・ミクログリアの相互作用による脳組織修復促進メカニズムの解明
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21H02719
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 美菜子 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (70793115)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳梗塞 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系炎症性疾患において様々な免疫細胞が脳内に浸潤する。T細胞・B細胞による獲得免役系とミクログリア・マクロファージを中心とした自然免役系、さらに神経細胞などの脳細胞が相互作用し、脳組織のホメオスタシスの維持や損傷後の修復に関与していることが予想される。本研究ではこのような相互作用を明らかにする。特に脳内炎症における脳特異的リンパ球や泡沫化マクロファージ/ミクログリアへの分化機構を明らかにし、さらに組織修復・神経再生への寄与とメカニズムを解明することを目標とする。 このために具体的には脳梗塞、多発性硬化症、アルツハイマー病のマウスモデルを用いて以下の3点を明らかにする。①bulk RNAseqや一細胞RNAseq技術を活用し、脳内炎症における脳細胞や脳内免疫細胞の動態やphenotypeを網羅的に解析する。②脳内炎症におけるT細胞がミクログリア/マクロファージとの相互作用や脳環境応じて脳特異的遺伝子発現を獲得する機構を明らかにする。③脂肪滴を貪食した泡沫化細胞に焦点を絞り、その発生機構や意義、脂肪組成や由来、脳組織修復への関与とそのメカニズムを解明する。泡沫化細胞とTregの相互作用による脳Treg分化機構を解明する。このような脳内炎症細胞と神経細胞をはじめとする脳内細胞との相互作用とそれによる修復機構の解明は、様々な神経炎症関連疾患の病態解明および治療・予防法の開発につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳内炎症においてT細胞(特にTreg)が脳環境に応じて脳特異的遺伝子発現を獲得する機構を生化学的に明らかにする。脳Tregの場合はHRT7発現を指標に脳免役細胞の固有の性質を付与する脳内抗原を含む脳内因子の同定を行う。脳組織は脂質の多い組織であるため、脳梗塞後によって死んだ脳細胞や残骸をマクロファージやミクログリアが貪食し、その結果として脳梗塞慢性期の脳梗塞巣に大量の泡沫化細胞が出現することを見出している(未発表)。脳梗塞後に脳に浸潤したTregは、ABC(ATP-binding cassette)タンパクでHDLコレステロールの産生に必須のトランスポーターであるAbca1やAbcg1を高発現していることがわかった。さらに、ミクログリアとTregを共培養することによってTregのAbca1の発現が上昇することが分かり、ミクログリアとの相互作用によって、Tregのフェノタイプが変化する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
共培養によって脳Tregの性質を獲得できたので、培養上清より活性物質を単離する。もしくはトランスウェルを使って、直接的なインタラクションア必要かどうかを検討する。因子が同定できたならばそれを脳内投与することによって神経修復への意義についての検証を行う。同時にEAEやアルツハイマーモデルなどでも共通性を検証する。脳Tregの性質の獲得には自己抗原による刺激が必要と考えられる。脳Treg特異的なTCRを単離しT細胞ハイブリドーマに導入してこれを活性化できる脳抗原の単離を行う。EAEやアルツハイマーモデルなどでも共通性を検証する。
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