2022 Fiscal Year Annual Research Report
腸管病原細菌による宿主生体防御クロストーク抑制機構の解明
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21H02728
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
芦田 浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (10535115)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞死 / necroptosis / pyroptosis / エフェクター / 腸管病原菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体は病原細菌の感染に対し、炎症や細胞死等の自然免疫応答を誘導することで感染を阻止する。これに対し、腸管病原菌はIII型分泌装置を通じて複数のエフェクターを宿主細胞内に分泌し、自然免疫応答を抑制する。興味深いことに、宿主側も病原細菌の自然免疫抑制を感知し、別の生体防御機構をバックアップとして発動させる「生体防御クロストーク」を有している。しかし、生体防御クロストークに関する知見は乏しく、それに対抗する病原細菌の生存戦略も未解明である。そこで本研究では、腸管病原菌感染における宿主生体防御クロストーク発動機構とそれに対抗する病原細菌の感染戦略を解明する。 本年度は、腸管病原性大腸菌(EPEC)感染における解析を行った。はじめにHeLa細胞に各種エフェクター遺伝子欠損株を感染させ、細胞死制御に関与するエフェクターを探索した。この結果、複数のエフェクター遺伝子欠損株感染で細胞死の上昇が確認された。このうち、エフェクターF遺伝子欠損株に注目し、細胞死の分類を試みたところ、エフェクターFはCaspase-4依存的なpyroptosisを抑制していることが明らかとなった。興味深いことに、エフェクターF遺伝子欠損株感染による細胞死の上昇はcaspase阻害剤処理で抑制される一方、necroptosis阻害剤処理では促進されていた。EPECはnecroptosisを阻害するエフェクターEspLを分泌する。そこで、EspLエフェクター遺伝子とエフェクターF遺伝子の二重欠損株を作製したところ、エフェクターF遺伝子欠損株感染で認められたpyroptosisの誘導は消失していた。すなわち、EPEC感染において、EspLによるnecroptosis阻害は別の細胞死pyroptosisを誘導する引き金となるが、EPECはエフェクターFを分泌することでpyroptosisを抑制していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、腸管病原菌感染における宿主生体防御クロストーク発動機構とそれに対抗する病原細菌の感染戦略の解明を目的としている。本年度は細胞死necroptosis阻害を目的としたEPECエフェクターによる宿主シグナル伝達経路の阻害が別の細胞死pyroptosis発動の引き金となることを見出したことからも、当初の予定通り順調に研究は進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はEPECエフェクターによる宿主シグナル伝達制御が別の細胞死を誘導することを明らかにした。今後はnecroptosis阻害とpyroptosis誘導の相互関係の詳細な作用機序の解析を進めるとともに、動物感染実験によりその感染における重要性を確認する。また、他の腸管病原菌感染における生体防御クロストーク発動機構とそれに対抗する感染戦略の解明を継続する。
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Research Products
(2 results)