2022 Fiscal Year Annual Research Report
食品由来の強力な自然免疫活性化能を示す新規物質の作用機序解析
Project/Area Number |
21H02733
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
関水 和久 帝京大学, 薬学部, 教授 (90126095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 惇嗣 帝京大学, 付置研究所, 講師 (40818308)
浜本 洋 帝京大学, 付置研究所, 准教授 (90361609)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乳酸菌Weissella hellenica / 自然免疫 / 緑膿菌 / カイコ感染モデル / マウス感染モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、乳酸菌Weissella hellenicaが産生する自然免疫活性化因子の精製、構造決定、並びに、作用機序の解析を行なった。本菌は発酵食品が製造されており、食経験のある乳酸菌である。研究代表者等は本免疫活性化因子を、ワイセリカイコシンと命名し、以下の研究成果を得た。 ワイセリカイコシンはカイコの緑膿菌感染モデルにおいて、著名な予防効果を示した。このワイセリカイコシンの効果には、前投与が必要であった。注射後6時間以上経過してから緑膿菌を注射すると治療効果が発揮された。ワイセリカイコシンそれ自体には抗菌活性は認められない。したがってワイセリカイコシンはカイコの自然免疫を活性化し、それにより治療効果を示すと考えられる。さらにワイセリカイコシンはマウスにおいても、前投与により緑膿菌感染に対して治療効果を示した。この結果は、ワイセリカイコシンがヒトの臨床において医薬品として利用できることを示唆している。 さらに研究代表者等は、本菌の培養上清からアルコール処理、疏水性カラムクロマトグラフィーにより、カイコの緑膿菌感染モデルにおける治療効果を指標に精製を行なった。精製の最終段階におけるHPLCにおいて、活性に対応したODのピーク画分を得た。LC-MS並びにNMR解析により、ペプチドグリカンの部分構造を有する物質であることが判明した。さらに決定した構造を基に化学合成し、合成された物質にカイコの緑膿菌感染モデルにおいて治療効果を示すことが明らかとなった。この結果は同定した構造が正しいことを検証するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ワイセリカイコシンをカイコの緑膿菌感染モデルにおける治療効果を指標に乳酸菌の培養液から精製し、構造決定できたことは大きな成果である。さらに化学合成による検証に成功したことは特筆に値する。 当初の予想に反して、培養液に含まれるワイセリカイコシンの量は少なかった。今後医薬品への利用を目指す上には、大量のワイセリカイコシンを入手する方法の確立が必要である。 これまで、自然免疫の活性化を作用機序とする医薬品の開発は、リポポリサッカライドLPSなど一部に限られている。ワイセリカイコシンの発見の当初においては毒性が問題になるとは考えなかったが、ワイセリカイコシンの本体がペプチドグリカンであることが明らかとなった現状においては、ワイセリカイコシンの毒性の問題を解決することが重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
ワイセリカイコシンはカイコの感染モデルにおいて緑膿菌による感染に対して著名な治療効果を示す。今後どの様な病原菌に対して治療効果があるかを見出すことが重要である。 また、自然免疫活性化を機序とする抗菌治療薬の先駆けとなるためには、毒性の評価が重要である。ワイセリカイコシンはカイコにおける治療効果を指標に発見、精製、構造決定されてきた。今後はマウスなどの哺乳動物における毒性並びに治療効果を評価していく必要がある。
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[Journal Article] Lysocin E Targeting Menaquinone in the Membrane of Mycobacterium tuberculosis Is a Promising Lead Compound for Antituberculosis Drugs.2022
Author(s)
Geberemichal Geberetsadik, Akane Inaizumi, Akihito Nishiyama, Takehiro Yamaguchi, Hiroshi Hamamoto, Suresh Panthee, Aki Tamaru, Manabu Hayatsu, Yusuke Mizutani, Shaban Amina Kaboso, Mariko Hakamata, Aleksandr Ilinov, Yuriko Ozeki, Yoshitaka Tateishi, Kazuhisa Sekimizu, Sohkichi Matsumoto
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Journal Title
Antimicrobial agents and chemotherapy
Volume: 66
Pages: e0017122
DOI
Open Access
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