2022 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子改変技術によるロタウイルス感染制御基盤の確立
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21H02739
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小林 剛 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (90324847)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ロタウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
サルロタウイルスSA11株VP4タンパク質は細胞表面のシアル酸に結合する。シアル酸結合領域に変異を加えた組換えウイルスを作製し、ウイルス感染におけるシアル酸結合の重要性について解析を行った。シアル酸結合部位変異ウイルスは野生型と比較し、感染性が低下していた。一方で、感染性がある程度保持されていたことからサルロタウイルスSA11株はシアル酸以外のレセプターを感染に利用している可能性が示唆された。マウスモデルを用いた解析を行った結果、シアル酸結合部位変異ウイルスでは下痢発症能や増殖性が向上していた。また、in vivoにおけるシアル酸結合部位変異ウイルスの増殖には腸内細菌叢が関与している可能性が示唆された。 ヒト結腸癌由来HT29細胞およびSA11株を用いてCRISPR-Cas9ゲノムワイドスクリーニングを行った。その結果、ロタウイルスの感染性の低下に関与する宿主因子を複数同定した。各候補遺伝子ノックアウト細胞を作製し、ロタウイルスおよび他のレオウイルス科ウイルスの感染性を比較した。その結果、TACSTD2(Tumor Associated Calcium Signal Transducer 2)遺伝子をノックアウトした細胞ではロタウイルスの感染性のみが抑制されていた。現在、ロタウイルス感染におけるTACSTD2の詳細な機能解析を行っている。 ロタウイルスNSP4タンパク質は病原性に関与する。NSP4の2か所の糖鎖付加部位に変異を加えたウイルスを作製し、作製した変異ウイルスの培養細胞における増殖性を解析した結果、2か所の糖鎖付加部位に変異を加えたウイルスでは野生型と比較して、増殖性が低下していた。また、viroplasmの形成能や三層粒子の産生能も低下していた。in vivo解析の結果、糖鎖付加部位変異ウイルスでは下痢発症能が低下していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はVP4タンパク質内のシアル酸結合部位に変異を加えた組換えウイルスの性状解析を行い、シアル酸への結合がロタウイルスの感染性や病原性に重要な役割を担っていることを明らかにした。ロタウイルスの感染に重要な宿主因子の同定を試み、TACSTD2がロタウイルス感染に関わることを見出した。NSP4タンパク質内の糖鎖結合部位に変異を加えたウイルスの性状解析を行い、増殖性や病原性に関与することを明らかにした。 上記の成果が得られたことから、研究計画の進捗状況についてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
シアル酸結合部位変異ウイルスの解析については、さらに詳細な性状解析を進めることで、ロタウイルス感染機構におけるシアル酸結合意義を解明する。また、腸内細菌叢とシアル酸結合部位変異ウイルスにおける相互作用機構の解明を行う。 ロタウイルス感染に相互作用する宿主因子の研究については、引き続き、TACSTD2を含む得られた候補因子に関して、ロタウイルスの増殖機構における機能を明らかにする。 NSP4変異ウイルスの解析については、糖鎖付加部位変異ウイルスの性状解析を引き続き行うとともに、新たなNSP4変異ウイルスを作製し、各ウイルス増殖サイクルにおける影響を調べる。加えて、下痢症発症動物モデルを用いて、病原性解析を行う。
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Research Products
(18 results)