2021 Fiscal Year Annual Research Report
T細胞におけるDAMPs-GPCRs経路活性化を介した腸管炎症制御機構の解明
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21H02747
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
香山 尚子 大阪大学, 高等共創研究院, 准教授 (40548814)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 粘膜免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
健常者とクローン病患者の便を用いてショットガン・シークエンシングを行った結果、クローン病患者の腸内にはLysoPSの産生に関わるホスホリパーゼAをコードする遺伝子ECSF_3660を持つE. coliが増えていること、クローン病型腸内細菌叢を有するマウスの腸管内では、健常者型腸内細菌叢を有するマウスに比べ、ECSF_3660を持つE. coliが多いこと、便中の18:0 LysoPSおよび18:1 LysoPS の濃度が高くなっていることを明らかにした。 Th1細胞では18:1 LysoPS刺激により細胞内代謝経路の一つである解糖系にかかわる遺伝子の発現が亢進していることが示された。そこで、便中の18:1 LysoPSの濃度が低い・中程度・高いクローン病患者の末梢血中のCD4+ T細胞を用いて解糖系の活性化度合を示すECAR(細胞外酸性化速度)の値を測定した結果、便中のLysoPS濃度に比例してECARの値が高くなることが示された。LysoPSの受容体の一つであるP2Y10受容体がTh1細胞に高発現することが示されたため、P2Y10受容体を持たないマウスもしくは野生型マウスのnaive T細胞を移入して大腸炎を発症させたRag2-/-マウスに18:1 LysoPSを腹腔内投与。野生型マウス由来の細胞を移入した群では18:1 LysoPS投与後、大腸粘膜固有層内のTh1細胞の増加および大腸炎の重症化が示されたが、P2Y10受容体を持たない細胞を移入した群では18:1 LysoPS投与をしてもTh1細胞の数および腸炎の症状に変化はなかった。これらの結果から、クローン病患者の腸管内において腸内細菌叢の乱れにより増加するリゾリン脂質LysoPSは、P2Y10受容体を介して解糖系を活性化することにより、過剰なTh1応答を誘導することで腸炎を悪化させることが明らかとなった
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定より早く、LysoPS-P2Y10受容体シグナルによるクローン病重篤化機構およびクローン病患者における腸管内LysoPS産生機構を同定し、国際科学雑誌に投稿中のため。
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Strategy for Future Research Activity |
LysoPS-P2Y10受容体シグナルにより損傷関連分子パターンの一つであるUDP-glucoseの受容体P2Y14の発現がT細胞で上昇することを見出している。また、定常状態の腸管粘膜固有層では、好酸球においてもP2Y14受容体が高発現することを同定している。LC-MS解析により、デキストラン硫酸塩投与により大腸炎を誘導すると大腸内でUDP-glucoseの濃度が顕著に上昇することを明らかにしている。現在、CRISPR-Cas9システムを用いてP2ry14欠損マウスの作成を進めている。P2ry14欠損マウスが得られた際には、UDP-glucose-P2Y14受容体シグナルによる腸管炎症制御機構を明らかにする。
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