2021 Fiscal Year Annual Research Report
Foxp3結合因子Ikzf1を標的とした新たな免疫応答制御法開発のための基盤研究
Project/Area Number |
21H02748
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
市山 健司 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授(常勤) (60777960)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 制御性T細胞 / 自己免疫疾患 / Foxp3 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、申請者が同定した新規Foxp3結合因子、Ikzf1のTregにおける生理的役割を検討するため、独自に作製したTreg特異的にIkzf1の機能不全変異体が発現する遺伝子改変マウスの表現型解析を中心に研究を遂行した。具体的には、まず、遺伝子改変マウスの生存曲線の作成および体重推移の測定を行うことで、遺伝子改変マウスが自然発生的に何か異常を示すかどうか確認を行った。その結果、遺伝子改変マウスはコントロールマウスと比較して、顕著な体重減少を伴って早期に死亡することが明らかとなった。そこで次に、早期死亡の原因が自己免疫疾患様の病態によるものかどうか検討するため、マウスの各臓器をHE染色し、さらに血清中の自己抗体を含む各種抗体産生およびサイトカイン産生を測定することで炎症等の異常症状の有無を確認した。その結果、遺伝子改変マウスでは各臓器にリンパ球の著しい浸潤が認められ、また血清中の自己抗体や炎症性サイトカインの産生増強が観察されたことから、自己免疫疾患様の激しい炎症が生じていることが明らかとなった。また同時に、遺伝子改変マウス由来の脾臓やリンパ節に存在するTreg細胞の割合もFACS解析により確認したところ、遺伝子改変マウスにおいてTregの割合が有意に減少することが見出された。 以上の結果から、TregでIkzf1の機能が欠失することでマウスが自己免疫性の炎症疾患により早期に死亡し、Tregの分化もしくは増殖に異常が生じることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は提出した計画書において、令和3年度はIkzf1のTreg特異的機能変異マウスの表現系解析を計画していた。実際に昨年度は、Treg特異的Ikzf1機能変異マウスの表現型解析を中心に研究を遂行し、TregでIkzf1の機能が欠失することでTregの割合が有意に減少すること、そしてマウスが自己免疫性の激しい炎症疾患を発症し、顕著な体重減少を伴って早期に死亡することを新たに見出した。 これらの進捗状況から、本研究は、おおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、Treg特異的Ikzf1機能変異マウス由来のTregのbiologyを中心に解析を行う。 具体的には、まずTregの機能維持 (安定性) に重要とされるTreg特異的脱メチル化領域 (TSDR) のDNA脱メチル化パターンに関して、Bisulfite-Seq解析を行い、Ikzf1のTreg安定性に及ぼす影響を確認する。次に、Tregの免疫抑性機能に及ぼす影響を検討するために、変異マウス由来のTregを用いてRNA-Seqを行うことでFoxp3, CTLA-4, CD25, GITRなどのTregによる免疫抑制機能に重要な分子の発現を網羅的に解析する。加えて、変異マウスからCD4+CD25+ Tregを精製・単離し、CD4+CD25- Tconvと共培養することでin vitroで増殖抑性能の評価を行う。また、同様に単離したCD4+CD25+CD45.2+ TregをRAG2欠損マウスにCD4+CD25-CD45.1+ Tconv細胞と共移入し、その後に発症する大腸炎の症状を解析することで、in vivoでの免疫抑制能も評価する。 次に、Ikzf1によるTreg制御のより詳細な分子メカニズムの解明にも取り組む。Ikzf1を含むFoxp3複合体は標的遺伝子付近のプロモーターやエンハンサー領域に結合し、Treg特異的なエピゲノム形成を介して遺伝子発現を制御することが知られている。そこで、Ikzf1がFoxp3のゲノムDNA結合およびTreg特異的なエピゲノム形成に及ぼす影響を検討するため、変異マウス由来のTregを用いてFoxp3のChIP-Seq、さらにTreg関連遺伝子座のクロマチン状態およびヒストン修飾状態をATAC-SeqおよびChIP-Seqによってそれぞれ全ゲノムレベルで網羅的に解析する。これにより、Ikzf1によるTreg機能制御機構の解明を試みる。
|