2021 Fiscal Year Annual Research Report
サイトカインデコイを介した自然リンパ球による炎症反応収束機構の解明
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21H02750
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
本村 泰隆 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (10587794)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自然リンパ球 / サイトカインデコイ / 収束機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗原により活性化し、抗原の消失と共に炎症が収束するT細胞とは異なり、内在性因子によって活性化する自然リンパ球 (ILC) の炎症収束機構はいまだ明らかとなっていない。これまでに、分泌型のサイトカイン受容体であるサイトカインデコイ受容体がその役を担っている可能性を見出した。そこで、サイトカインデコイ受容体を介した自然リンパ球による炎症収束機構を解き明かす。本研究では、ILC2の活性化サイトカインIL-33のサイトカインデコイ受容体である可溶性ST2に着目し、ILC2が引き起こすアレルギー炎症における発現動態および発現細胞の解析を試みた。その結果、パパイン誘導型喘息モデルマウスにおいて、経時的に肺における可溶性ST2の発現が、喘息の発症時期よりもアレルギー炎症後期において亢進してくることが明らかとなり、その発現は好酸球浸潤と正に相関した。可溶性ST2の発現誘導が2型炎症によるものなのかを調べるため、LPS誘導型の肺炎症モデルマウスを用いて解析したところ、可溶性ST2の発現亢進は見られなかった。したがって、2型炎症が選択的に可溶性ST2の発現を誘導することが明らかとなった。2型炎症時における可溶性ST2の発現細胞を同定するため、肺を各細胞群に分け、それぞれの細胞における可溶性ST2の発現を解析したところ、間葉系細胞群において発現亢進が見られた。間葉系細胞は、これまでにILC2のニッチを形成することが明らかになっていることから、間葉系細胞がILC2の機能を正にも負にも制御する役割を持つ可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ILC2による炎症反応の収束機構を明らかにするため、ILC2を介したアレルギー病態におけるIL-33のサイトカインデコイ受容体である可溶性ST2に着目し、病態の進行過程における可溶性ST2の発現変動を明らかにした。可溶性ST2の発現が、炎症が進行するとともに亢進し、好酸球性炎症反応と優位に相関した。喘息モデルマウスにおける発現解析から、好酸球炎症反応時に最も可溶性ST2の発現が誘導される細胞として間葉系細胞を見出した。LPSによる好中球性炎症では可溶性ST2の発現が誘導されないこと、可溶性ST2の発現が好中球浸潤とは相関を示さなかったことから2型炎症により選択的に可溶性ST2が誘導され、その主な産生細胞として間葉系細胞が考えられた。これまで、間葉系細胞は、ILC2のニッチを形成するとともに、IL-33の産生源の一つとして考えられたことから、ILC2の活性化に加え、抑制にも役割を持つことが示唆された。2型炎症が間葉系細胞から可溶性ST2の発現を誘導することが考えられ、間葉系細胞とILC2の間には、可溶性ST2を介した負のフィードバック機構が存在することを示唆している。これらの解析からILC2による炎症反応の収束に寄与する細胞の同定に至っている。現在、可溶性ST2の発現制御機構を明らかにするため、ST2遺伝子座の2つのプロモーター領域(遠位、近位プロモーター)に着目し、プロモーター解析を行っている。今後、予定していたプロモーター解析を行うことにより可溶性ST2の発現制御機構の解明するとともに、見出したILC2による収束機構の生体における役割を検証する。以上より、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、間葉系細胞におけるST2遺伝子プロモーター解析を行い、可溶性ST2の発現制御機構を明らかにするとともに、アレルギー病態における可溶性ST2の制明御機構の破綻が、アレルギー病態の増悪を引き起こすかを解析する。そして、可溶性ST2によるILC2の炎症収束機序の全貌を明らかにする。また、次にILC3における収束機構に着目する。ILC3による炎症反応の収束機構を明らかにするため、ILC3の活性化サイトカインIL-1のデコイであるIL-1rnに焦点をあて解析を行う。ILC3による炎症反応として、Rag2-/-マウスに抗CD40抗体に投与し大腸炎を誘導するマウスモデルを用い、IL-1rnの病態進行過程における発現動態を明らかにし、発現細胞の同定を試みる。また、IL-1rnを中和することでにより、ILC3による炎症反応の増悪が引き起こされるかを解析するとともに、IL-1rnの投与によってILC3を介した炎症反応が抑制できるかを解析し、IL-1rnによるILC3炎症の収束機構への寄与を評価する。さらに、IL-1rnの発現制御機構を解析することでILC3の炎症反応の収束機構の分子メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(3 results)