2022 Fiscal Year Annual Research Report
IDO-1阻害と放射線照射がもたらす抗腫瘍効果のマルチレイヤー解析
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21H02778
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野澤 宏彰 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80529173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 聡一郎 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (00376443)
佐々木 和人 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00781238)
園田 洋史 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80770205)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸癌 / インドールアミン酸素添加酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
Indoleamine 2,3 dioxygenase 1 (IDO1)は、Tryptophan(Trp)をKynurenine(Kyn)に代謝する酵素である。我々は腫瘍細胞内の代謝産物に着目し、IDO1阻害剤および放射線照射に伴う生化学的な腫瘍抑制メカニズムを明らかにすべく研究を進めている。 今年度は、大腸癌細胞株およびマウスへ移植した同じ大腸癌細胞株由来の皮下腫瘍を用いてメタボローム解析を行った。それぞれcontrol群、IDO1阻害剤単独(1-MT)群、放射線6または4Gy照射(RT)群、1-MT+RT群の4治療群を作成した。皮下腫瘍サンプルでの解析では、Control群と比較し、RT群ではTrpの減少とADP-riboseの増加を認めた。一方、1-MT+RT群ではTrpとADP-riboseは変化しなかった。これらから、RT群ではDNA損傷を生じた結果ADP-riboseの需要が増加した一方で、ADP-ribose合成に用いられた結果Kynは枯渇し減少したという可能性を考えた。培養細胞のサンプルについては現在分析中である。 上記で推察された腫瘍抑制のメカニズムの仮説を検証するためにDNA損傷定量化のアッセイ法の1つであるHPRT assayを行った。細胞数を1x10 6個とした場合にコロニーの形成を確認したがそれ以上の細胞数においてはコロニーが形成されず、別のアッセイが望ましいと考えられた。 一方でヒト検体におけるIDO1の発現を評価するため直腸癌の少数例で免疫組織染色を行った。術前化学放射線療法(CRT;RT単独も含む)の施行例において、CRT前で染色増強が見られた。また、術前と手術検体の比較では、手術検体で染色の減弱が見られた。これらの結果から、IDO1の発現はCRT/RTによって増強される一方で、CRT後から手術までの間に経時的に減弱していく可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Colon26を用いた皮下腫瘍、およびColon26のin vitro培養系で、それぞれ1-MT, 放射線照射の有無による影響をLC-MSベースに解析し、NAD+の枯渇が共処理によって生じる有意な変化であることが明らかとなった。今後の解析標的が現時点で明らかとなっている点で順調に研究が遂行できていると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
より数値のばらつきが小さい大腸癌細胞株でのメタボローム解析結果より抽出された知見とマウス皮下腫瘍での結果を共通のものを見出して、腫瘍細胞由来のメタボローム変化として主成分解析などを通じて検証していく方針である。 1-MT上乗せの抗腫瘍効果の機構としてのDNA損傷修復不良の仮説については、大腸癌細胞株に対する処理に基づき、control群、1-MT群、RT群、1-MT+RT群の4つに分けて、DNA損傷の指標として知られるγH2AXに対するWestern-blottingまたは免疫組織染色を行ってこれまでの知見を検証する予定である。 ヒト直腸癌症例においては、CRT直後に最もIDO1の発現が増強する可能性についてサンプル数を増やし検証する。
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