2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21H02796
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
荻原 秀明 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (40568953)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 合成致死性 / 標的探索 / がん治療 / 分子標的薬 / 阻害薬 / クロマチン制御因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、クロマチン制御因子のパラログ因子群の同時抑制による治療標的探索法を確立し、クロマチン制御因子欠損がんに選択的に致死性を示す治療標的を同定する。今年度は、以下を検討した。 まず、文献やデータベースを調査し、クロマチン制御因子の中で、パラログが存在する因子を特定し、パラログペアとなる因子群を絞り込んだ。次に、パラログペアを同時に抑制するためのアッセイ系を構築するために、パラログペアに対するそれぞれの遺伝子を標的とするsiRNAを作成し、各パラログペアのsiRNAを混合したsiRNAプールライブラリーを構築した。さらに、パラログペアを同時に抑制することで正常型細胞への細胞増殖への影響を検討した。胎児腎細胞由来の正常型細胞HEK293T細胞に対して、各パラログペアのsiRNAを導入することで各パラログペアの機能を抑制した後の細胞増殖を観察した。その結果、いずれのパラログペアを抑制しても細胞増殖への影響が少なかった。このことから、パラログペアを同時に抑制しても正常細胞への影響が少ないことが考えられるため、パラログペアを同時に抑制する阻害薬を開発した場合に人体への副作用が少ないことが考えられた。 次に、クロマチン制御因子の欠損型がん細胞株モデルの構築を検討した。特にがんで高頻度に欠損型異常が認められるSWI/SNFクロマチンリモデリング複合体の構成遺伝子やヒストン修飾遺伝子に着目し、それらの遺伝子の正常型細胞株に対してノックアウト細胞株、あるいは欠損型細胞株に対してレスキュー細胞株を樹立することで、クロマチン制御因子欠損型がん細胞株モデルを構築した。さらに、これらのモデル系を用いて、パラログペアを抑制したときに正常型細胞では増殖に影響が少なく、欠損型細胞では致死性を示す標的候補を探索した。その結果、複数のパラログペアを標的候補として同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における研究計画に即して、標的探索のアッセイ系を構築し、そのアッセイ系を用いて治療標的候補を複数同定できた状況であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに同定した標的候補について、複数のがん細胞株モデルやがん細胞株パネルを用いて、着目する欠損型遺伝子異常に特異的な標的を絞り込む予定である。有望な標的を絞り込めた場合は、着目するクロマチン制御因子欠損がんにおける標的因子の抑制による致死性のメカニズムの解明を検討する。
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