2021 Fiscal Year Annual Research Report
新たな脂質異常症の概念の確立を目指した脳修復性脂質の作用機序の解明と治療剤開発
Project/Area Number |
21H02820
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
七田 崇 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, プロジェクトリーダー (00598443)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / 神経細胞 / 機能回復 / 脂質代謝物 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的に高齢化社会が進み、脳血管障害の機能予後を改善する治療法の開発に期待が集まっており、スタチンやω3脂肪酸製剤の普及によって脳血管イベントを低減させることに成功している。一方で、脳血管障害における網羅的な脂質解析に基づく脂質代謝研究はほとんど行われていない。本研究では、脳梗塞モデルマウスを用いた網羅的な脂質解析の結果から、炎症を収束させて神経修復を促進する新規の生理活性脂質を見出し、脳血管障害の治療法に応用することを目指している。実際に、脳梗塞後の機能予後に関わる重要なホスホリパーゼの同定に成功し、脳内の修復機転を開始させる生理活性脂質とその作用機序を明らかにすることができた。このようなホスホリパーゼによって脳内で生成される脂質は、脳梗塞周辺の神経細胞においてペプチジルアルギニンデイミナーゼの発現を誘導し、神経組織の再形成や神経ネットワークの構築に必要な遺伝子群の発現を可能にしていた。同定できた脳修復的な作用をもつ脂質を脳梗塞モデルマウスに投与すると、脳梗塞後の神経症状を改善し、神経細胞における修復効果をもつ遺伝子群の発現を促進することが確認できた。このように、我々が同定した脳修復的な作用をもつ脂質を用いて治療剤開発につなげることが可能であると考えられる。脳は長らく回復が難しい臓器であると考えられてきたが、脳内には自律的な修復メカニズムが存在する事が証明できた。研究成果については特許申請を済ませ、論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳修復的な脂質の同定に成功し、その作用機序の詳細を明らかにして治療剤開発につなげるための十分な実験結果を得ることができた。研究成果は既に国内外の学会で発表を行っており、論文の投稿も済ませている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究成果を治療剤開発につなげるため、さらにヒトサンプルを用いた検証を進める予定である。さらなる生理活性脂質の同定実験を行い、脳修復作用のメカニズムを詳細に解明する。脳損傷後の神経回路再構築のメカニズムを探るため、最新の神経科学的な解析手法や次世代シークエンス解析法を取り入れ、脳卒中における脂質代謝研究として確立したい。
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