2022 Fiscal Year Annual Research Report
新たな脂質異常症の概念の確立を目指した脳修復性脂質の作用機序の解明と治療剤開発
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21H02820
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
七田 崇 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, プロジェクトリーダー (00598443)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / 神経細胞 / 機能回復 / 脂質代謝物 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、脳梗塞モデルマウスを用いた網羅的な脂質解析を行った結果、これまで機能未知であった脂質代謝物に神経修復作用が認められることを見出した。本年度は脂質代謝物の作用経路と神経修復に必要なエピジェネティックなメカニズムを解析した。脂質代謝物の受容体を網羅的にスクリーニングし、主に神経細胞においてPPARγを介して作用し、ペプチジルアルギニンデイミナーゼの発現を誘導することが明らかとなった。ペプチジルアルギニンデイミナーゼはヒストンのアルギニン残基をシトルリン化する酵素であるが、脳梗塞周囲で生き残った神経細胞にはヒストンのシトルリン化が、神経修復に関連した遺伝子群の周囲に見られることが明らかとなった。すなわち我々が発見した脳修復的脂質は、脳梗塞周囲の神経細胞において神経修復に関連した遺伝子群の発現を開始させる作用を持つと考えられた。 一細胞RNA-seq解析によっても脳梗塞周囲に修復性の遺伝子発現パターンを持つ神経細胞が観察され、脳損傷の際に修復性因子を発現する特有の神経細胞集団が半数以上認められることが示唆された。特に神経修復に関わる神経細胞集団を同定することができた。我々が同定したペプチジルアルギニンデイミナーゼが発現しないマウスを用いて脳梗塞を作製すると、修復性の遺伝子発現パターンが顕著に失われたことから、脳修復的脂質が脳梗塞後の神経修復の開始に必須の分子であることが裏付けられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳修復的な脂質の同定、作用機序の解明に成功した。食事でも摂取できる脳修復的脂質について国際特許の申請を済ませ、論文も採択見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究成果を国内、海外に広くアピールし、創薬に向けた企業との提携・共同研究を進める。更にヒトにおける、我々の研究成果の検証が必要であるため、臨床研究・治験に向けた活動を行っていく。
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