2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of genetic factors that define myocardial vulnerability as a basis for the development of heart failure
Project/Area Number |
21H02919
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊藤 薫 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (50375664)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桃沢 幸秀 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (40708583)
尾崎 浩一 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 メディカルゲノムセンター, センター長 (50373288)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 心不全 / ゲノミクス / 高速シークエンサー / 人工知能 / 遺伝統計学 / 精密医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度作成した約1万人の一般的な心不全患者の高解像度ゲノムデータを用いて、低頻度で疾患オッズ比の高い遺伝子変異の解析を行った。アレル頻度0.01%以下の閾値を用いて生物学的効果量の高い遺伝子変異のみフィルタリングし、タンパク質切断変異、RNAスプラシングに影響を及ぼす変異(SpliceAIアルゴリズムにて選択)、ミスセンス変異の中でとくにタンパク質機能に影響を及ぼすもの(REVELスコアを使用)を選択的に取り出し、病原性の高い遺伝子変異について遺伝統計学的手法を用いて検討を行った。 大規模バリアントデータベースthe genome aggregation database (https://gnomad.broadinstitute.org/)をリファレンスとして、心不全集団に顕著に多く存在する遺伝子変異を検討したところ、複数個の未報の遺伝子が候補として挙がった。一方、年齢や性別による補正が出来ないため、続いて約5000人のコントロールデータを用いてGene-based testを行った。その結果、多重検定補正を行ってもなお既報のTTN遺伝子の他、8個の遺伝子上の変異群が心不全患者集団に濃縮していることが判明した。 またこれらの遺伝子変異の心不全発症オッズ比は~20程度と非常に効果が強く、加えてこれらの集団内頻度は6.7%と個々のアレル頻度から予想されるよりも高かった。一方、コントロール群においてもこれら遺伝子変異は1.1%存在していたが、病的意義は不明であった。その理由は浸透率の問題か、または未発症であるのか注意深く解釈する必要がある。総じて、これらの結果は心不全診療における、希少遺伝子変異の重要性を再度強調する結果となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度作成した約1万人の心不全患者のゲノムデータと約5000人のコントロールデータを用いたケース・コントロールスタディ、また大規模バリアントデータベースthe genome aggregation database (https://gnomad.broadinstitute.org/)をリファレンスとして解析を行った結果、既報の心不全関連遺伝子の他、8個の遺伝子を新規に同定した。また、一般的な心不全患者において希少な遺伝子変異が存在する割合を示し、その存在意義を証明できたと考えられる。加えてこれらの成果は、2023年3月の日本循環器学会学術集会総会で発表された。
|
Strategy for Future Research Activity |
①人工知能を用いて、心不全に関与する遺伝子群と寄与度の推定を行う:統計的な方法により新規遺伝子の同定に成功したが、希少な遺伝子変異に関してはLiらの提唱した人工知能を用いた方法(Li J. et al. Cell 2018)が高効率に有意な遺伝子を検出できることが知られている。私たちはこの方法を更に改良したModified HEAL method(Ieki, Ito et al. Manuscript in preparation)を開発しており、本データセットにもこの方法を用いる。 ②心不全発症に関与する遺伝子変異の、臨床パラメータや予後に対する影響を明らかにする:前年度また①で同定した心不全関連遺伝子群は、どのように心不全発症に関与 するのか、また長期的影響も不明である。そこでこれらに対して入手可能な全ての臨床パラメータとの関連を網羅的に調べる。加えて、心不全関連遺伝子群 と心血管死亡追跡データとの関連を調べることによって、どの遺伝子が死亡に強い影響を持つかも検討する。このように心不全感受性遺伝子群の特性を明らかに することによって、心不全のゲノム医療の実現に資する情報を提供することができる。 ③心不全精密医療実現のツールとなる心不全遺伝リスクスコアの開発:私たちの開発したModified HEAL methodは①のように関連遺伝子を優先付けするだけでなく、ゲノム情報をインプットとしてゲノムリスクスコアを構築できる。スコアはnested cross-validation methodにより過学習を避けるように設計し、汎用性を確保する。また頻度の多い一般的な遺伝的多型から算出される遺伝的リスクスコアとの統合を行う。このように導かれたスコアは、遺伝素因による心不全発症リスクを精密に階層化し、一次・二次予防、治療方針決定な どに役立つことが期待される。
|
Research Products
(12 results)