2021 Fiscal Year Annual Research Report
B細胞、IL-6、IL-17を軸とした全身性強皮症の一元的病態仮説の確立
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21H02939
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 伸一 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (20215792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉崎 歩 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40530415)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 強皮症 / 自己免疫 / B細胞 / サイトカイン / 新規治療法開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
全身性強皮症(SSc)の病態は複雑であり、肺、皮膚などの線維化、皮膚潰瘍、肺高血圧症といった多彩な血管障害、そして自己抗体産生などの免疫異常を呈する。さらにこれまで有効性が確認された治療は2剤(シクロフォスファミド、ニンテダニブ)のみであり、これらの多彩な病態を一元的に説明する病態仮説を提示することは困難であった。申請者は医師主導治験にてSScで、リツキシマブ(抗CD20抗体)によるB細胞除去療法の有効性を世界で初めて証明した。また申請者によって開始されたブロダルマブ(抗IL-17RA抗体)の探索的試験では、その有効性が示唆された。加えてトシリズマブ(抗IL-6R抗体)の国際共同治験では、その肺線維症への有効性が示唆されている。本研究では、これらのB細胞、IL-17、IL-6といった治療ターゲットに基づいた病態仮説を提示し検証することが目的である。この研究によってSScの本病態仮説について検証するとともに、本仮説に関与する他の分子や、本仮説におけるB細胞、IL-6、IL-17それぞれの相対的な関与などについても明らかにされることが期待される。これまでSScの病態を説明しうる病態仮説はほとんど提示されてきていない。その理由として、SScの病態が複雑なために一元化された病態仮説を作成することが困難であったこと、そして病態仮説を作成するために必須である、SScに有効性が証明された薬剤が極めて少ないことが挙げられる。本研究では、申請者の施設で世界に先駈けて施行したリツキシマブの医師主導治験やブロダルマブの探索的第I相試験の結果に基づいて、病態仮説を提示している点に独自性がある。またSScでは根元に存在する3つの主要病態を同時に説明しうる仮説の作成も困難であったが、この病態仮説では3つの主要病態を一元的に説明することができることも特徴である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において実験は以下の3つのパートに分けて行う:1) ヒトSScでのB細胞、T細胞のフェノタイプ解析(ブロダルマブ、リツキシマブ投与前後)、2) SSc由来topo I反応性B細胞、SSc由来線維芽細胞およびヒト真皮微小血管内皮細胞の、IL-17に対する反応性などを評価するin vitro解析、3) B細胞、線維芽細胞でIL-17RAを欠損させたコンディショナルノックアウトマウスのin vivo解析。以下に本年度の実施状況を述べる。 1) ヒトSScでのB細胞、T細胞フェノタイプ解析(ブロダルマブ、リツキシマブ投与前後):IL-17がT細胞やB細胞のサブセットに与える影響を検討するために、ブロダルマブ投与前後で末梢血T細胞およびB細胞のフェノタイプ解析を行った。またIL-17によって生存が維持されている可能性があるtopo I反応性B細胞の数が、ブロダルマブ投与によって減少するかどうかについても解析を行った。さらにリツキシマブ投与前後に上記の末梢血T細胞フェノタイプ解析を行い、特にTh17、Tregの変化を検討した。 2) SSc患者由来topo I反応性B細胞、線維芽細胞およびヒト真皮微小血管内皮細胞のin vitro解析:SSc由来topo I反応性B細胞の分離と、拡張ナノELISAによる単一細胞レベルでのサイトカイン測定を行った。ヒトSSc患者よりビオチン化topo Iを用いてtopo I反応性B細胞を蛍光標識し分離する。蛍光標識されたtopo I反応性B細胞は光ピンセットで移動させた。光ピンセットは顕微鏡下に直接蛍光を視認しつつ、低出力のレーザー光で細胞を移動させる技術であり、cell sorterなどで問題になる目的細胞以外の混入を避けることが可能である。次に拡張ナノELISAによって単一細胞レベルでサイトカインを測定した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究における、今後の計画について以下に記載した。 1)Topo I反応性B細胞のIL-17、IL-21、IL-23産生能の解析を実施する。光ピンセットにて単離したtopo I反応性B細胞がIL-17A, Fを産生するかどうかを、拡張ナノELISAを用いて単一細胞レベルで検討する。さらに、TregをTh17へと変化させるサイトカインであるIL-21、IL-23の産生の有無も検討する。 2)Topo I反応性B細胞の機能解析を実施する。Topo I反応性B細胞におけるIL-17RAの発現量、IL-17A, F, C, Eを作用させた場合の活性化、増殖、アポトーシス、免疫グロブリン産生、抗topo I抗体産生を解析する。topo I反応性B細胞で増強したCD19発現量がIL-17刺激によってさらに変化するかどうかも検討する。さらにIL-17刺激前後でのtopo I反応性B細胞をマイクロアレイ解析によって、IL-17によって変化する分子群を明らかにし新たな治療ターゲットの候補の同定を目指す。 3)SSc由来線維芽細胞の機能に対するIL-17の作用を検討する。IL-17が、線維芽細胞からのコラーゲン産生を増加させるかどうかについては見解の一致を見ていない。本研究ではSSc生検皮膚より新たに線維芽細胞を分離し、IL-17の刺激を加えて、その増殖能およびコラーゲン産生能を評価する。 4)ヒト真皮微小血管内皮細胞に対するIL-6、IL-17の作用を検討する。IL-6、IL-17がSScに類似する血管障害を誘導するどうかを明らかにするため、ヒト真皮微小血管内皮細胞にIL-6、IL-17を作用させ、血管内皮細胞の安定性に寄与するPECAM-1、PDGF-Bなど分子やICAM-1などの細胞接着分子の発現やアポトーシスの誘導などについて解析する予定である。
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[Journal Article] Interleukin-31 promotes fibrosis and T helper 2 polarization in systemic sclerosis.2021
Author(s)
Kuzumi A, Yoshizaki A, Matsuda KM, Kotani H, Norimatsu Y, Fukayama M, Ebata S, Fukasawa T, Yoshizaki-Ogawa A, Asano Y, Morikawa K, Kazoe Y, Mawatari K, Kitamori T, Sato S.
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Journal Title
Nat Commun.
Volume: 12
Pages: 5947
DOI
Peer Reviewed / Open Access