2021 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamism of spaciotemporal trafficking of hematopoietic stem/progenitor cells
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21H02947
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
片山 義雄 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (80397885)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 移動 / 造血幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度までの研究で、骨髄赤芽球から産生される増殖因子(かつ一般的にはリン代謝ホルモンとして知られる)fibroblast growth factor-23 (FGF23)が高濃度で造血幹前駆細胞のFGF受容体に結合することにより、同細胞のケモカイン受容体CXCR4からのシグナルを抑制してケモカインCXCL12による細胞係留作用を断ち切ることで、造血幹前駆細胞が骨髄から遊離しやすくなることを確認した。この際、FGF23の結合は細胞表面上のCXCR4の発現強度やCXCL12蛋白の結合強度には全く影響を与えておらず、ほぼ細胞内シグナルの変化のみでその効果を発揮していた。また、食餌中のω3脂肪酸、特にeicosapentaenoic acid (EPA)が骨髄幼若好中球の受容体型転写因子PPARδのリガンドとして働き、骨髄血管透過性抑制因子angiopoietin-like protein 4(Angptl4)を産生させ、骨髄から造血幹前駆細胞の末梢血への動員を抑制していることも確認した。これらの知見は、骨髄有核細胞の大部分を占める骨髄球系細胞と赤芽球系細胞が、それらの親とも言える造血幹細胞の位置的運命制御を強力に行なっていることを示している。令和4年度にはこれらの機構が骨髄異形成症候群や骨髄増殖性疾患モデルでの病態形成に寄与しているかどうかを検討する予定である。 これらに加えて、血管内皮細胞に強く発現し、造血細胞動員時に骨髄球系細胞で発現が変化することを我々独自に捉えている分子 adrenomedullin(Adm)について、全身性ノックアウトマウスとfloxマウスを令和3年度に作成した。令和4年度には、造血幹前駆細胞の移動メカニズムにおけるAdmの作用についてもこれら新たなマウスモデルを用いて検討を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる目的である、骨髄造血幹前駆細胞の移動メカニズムを強力に制御する新たなシグナルリレーの解明については、順調に明らかになってきている。予定していた胎性肝からの動員については、人的ソースが限られているため予定を変更し、成体骨髄からの移動に注力して Adm の作成と解析に軸足を移行している。この方策により、予定されている骨髄異形成症候群と骨髄増殖性疾患についての造血幹細胞移動メカニズム解析をスムーズに開始することとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
・正常造血幹前駆細胞の移動メカニズムに関しては、これまでの成果を発展させつつ Adm の知見を加えて、より大きな理解の構図に広げていく。 ・胎性肝からの動員については、人的ソースが限られているため予定を変更し、成体骨髄からの移動に注力する。 ・骨髄異形成症候群と骨髄増殖性疾患についての造血幹細胞移動メカニズム解析を予定通り進めていく。
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