2021 Fiscal Year Annual Research Report
新型ウイルス感染症を標的とした新たな免疫治療法確立のための基盤研究
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21H02966
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
村口 篤 富山大学, 学術研究部医学系, 特別研究教授 (20174287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸 裕幸 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (60186210)
小澤 龍彦 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (10432105)
小林 栄治 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (70459733)
浜名 洋 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (90551549)
宇高 恵子 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (40263066)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ウイルス感染症 / 次世代型免疫療法 / TCR様抗体 / TCR遺伝子治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)ウイルスペプチド/HLAを認識する高親和性TCR様抗体の作製法の開発:TCR様抗体はTCRの親和性と比較して100倍以上の親和性があり、がん免疫研究ではCAR-TやBiTEを作製して、がん細胞を破壊させる次世代型治療法として期待されている。しかしながら、TCR様抗体取得は極めて困難である。我々はISAAC法を応用して、ウイルスペプチド/HLAを標的とした高親和性TCR様抗体を迅速かつ高効率に取得する新技術の開発に挑戦した。本年度は、EBウイルス由来のペプチド/HLAをモデルとし、作製したBRLF1p/HLA-A24をウサギに免疫し、ISAACで高親和性(TCRの1万倍以上, Kd>10-10)のTCR様抗体を取得した。その際、HLAのH鎖あるいはベータ2-ミクログロブリンへの非特異的結合を除外するために、チップをEBNA3Ap/HLA-A24で前処置を行った。その結果、従来法に比べ、取得効率を100倍以上上げることができた。 2)T-ISAACのヒトへの応用のための基盤技術の開発:我々は、T-ISAAC法の開発を動物モデルで進めてきた。本システムをヒトに応用するために、2つの課題をクリアした。1つ目の課題は検出系の最適化であり、IFN-γ以外のサイトカイン(IL-2、TNF-α)について検討した。モデル抗原としてEBウイルス抗原ペプチドを用い、従来の検出系の10倍以上の感度を得ることができた。2つ目の課題はin vitroでのペプチド特異的なTリンパ球の増幅技術の開発であり、ペプチド特異的T細胞をin vitroで増殖させるためのペプチド濃度、刺激時間の条件、微小環境(96穴Uプレート)の増殖等の検討を行った。モデル抗原としてEBウイルス抗原ペプチドを用いた。この増幅技術の開発により、チップに播種するペプチド特異的T細胞数を現状の10倍以上にすることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、これまでに独自に開発した「リンパ球チップ」を基盤に、感染症やがん患者の末梢血リンパ球から抗原特異的抗体(Ab)およびT細胞受容体(TCR)のcDNAを網羅的かつ迅速に取得できる画期的なシステム(ISAAC,hTEC10)を世界に先駆けて開発した。本研究は、ISAAC、hTEC10システムをさらに発展させ、ウイルス感染細胞を標的とする新たな免疫治療法(高親和性TCR様抗体治療/ペプチド特異的TCR遺伝子治療)の基盤技術を確立することを目指している。 2021年度の研究計画は、1)ウイルスペプチド/HLAを認識する高親和性TCR様抗体の作製法の開発と2)T-ISAACのヒトへの応用のための基盤技術の開発であった。研究計画1)については、ISAAC法を応用し、ウイルスペプチド/HLAを標的とした高親和性TCR様抗体を迅速かつ高効率に取得する新技術の開発に成功した。具体的には、EBウイルス由来のペプチド/HLAをモデルとし、従来法に比べ、取得効率を100倍以上上げることができた。研究計画2)については、本システムをヒトに応用するために、検出系の最適化とin vitroでのペプチド特異的なTリンパ球の増幅技術の開発を行った。まず、検出系の最適化のためにIFN-γ以外のサイトカイン(IL-2、TNF-α)について検討して、検出系にIL-2を用いることで従来の検出系の10倍以上感度をあげるがことができた。次に、in vitroでのペプチド特異的なTリンパ球の増幅技術を開発するために、モデル抗原としてEBウイルス抗原ペプチドを用いて、ペプチド濃度、刺激時間の条件、微小環境(96穴Uプレート)の増殖等の検討を行った結果、チップに播種するペプチド特異的T細胞数を現状の10倍以上にすることが可能となった。 以上の理由により、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度以降に、以下の2つの研究を推進する。 1)研究課題1:ウイルスペプチド/HLAを認識する高親和性TCR様抗体のBiTE作製:2021年度に確立した効率的取得法で獲得した高親和性TCR様抗体を用いてBiTEを作製し、機能を評価する。BiTEは、TCR様抗体(BRLF1p/HLA-A24抗体)と抗CD3-scFvのキメラ蛋白(BRLF1p/HLA-A24抗体/CD3 BiTE)を作製する。機能評価は、HLA24陰性の末梢血CD3+リンパ球と標的細胞(あらかじめBRLF1pをパルスしたルシフェラーゼ発現型T2-A24細胞株(BRLF1p/T2-A24-Luc)を共培養し、Luc蛍光を測定して傷害活性を評価する。EBNA3ペプチドをパルスしたEBNA3p/T2-A24-Luc細胞を対照に用いる。 2)研究課題2:健常人・新型コロナ感染患者のウイルスペプチド特異的T細胞の同定:2021年度の研究成果を踏まえ、健常人・新型コロナウイルス感染患者の末梢血を用いて、コロナウイルスペプチド特異的T細胞の効率的取得を目指す。宇高らが開発したString-Kernel Support Vector Machine(SKSVM)を用いて、コロナウイルスペプチド候補ペプチドのライブラリー(10~20)を作製する。HLAは、日本人に多いHLAのHLA-A24、HLA-A02を研究対象とする。HLA-A24、HLA-A02の健常人あるいはコロナ感染患者の末梢血Tリンパ球を分離し、in vitro刺激してペプチド特異的T細胞を増殖した後に、リンパ球チップで刺激後、活性化されて分泌されたIL-2を蛍光法で検出する。次に、得られたTCR遺伝子の結合能について確認し、TCR遺伝子をヒトTリンパ球に遺伝子導入し、標的細胞(ペプチドパルスしたHLA/Luc発現細胞株)で細胞傷害活性を最終確認する。
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Research Products
(14 results)