2021 Fiscal Year Annual Research Report
New vaccine strategies by the use of lipid immunity
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21H02968
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉田 昌彦 京都大学, 医生物学研究所, 教授 (80333532)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脂質免疫 / リポペプチド / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、脂質や脂質修飾ペプチド(リポペプチド)を標的としたいわゆる「脂質免疫」に焦点を絞り、その人為的賦活法の開発をもとに脂質ワクチンという新しいコンセプトのワクチン開発の基盤構築を目指している。研究代表者は、アカゲザルエイズモデルの詳細な免疫解析を進め、ミリストイル化ウイルスタンパク質のN末端配列に由来するにリポペプチドを標的とした新たなCD8陽性細胞傷害性T細胞(CTL)応答の存在を発見した。さらにリポペプチド抗原提示分子を担うアカゲザルMHCクラス1分子群(Mamu-B*098, Mamu-B*05104)を同定し、その構造を明らかにするとともに、Mamu-B*098トランスジェニックマウスの作出に成功している。本年度、Mamu-B*098分子の細胞表面発現がTAPペプチドトランスポーターに依存しないことに着目し、TAP欠損Mamu-B*098トランスジェニックマウスラインを樹立した。このマウスはペプチドを提示する内因性MHCクラス1分子の発現や機能が損なわれているため、リポペプチド特異的CTLの選択的活性化が可能となる。このマウスに従来汎用されているアジュバント(完全フロイントアジュバント、polyI:Cなど)を用いたリポペプチド感作を行っても、効率的なリポペプチド特異的T細胞応答は誘起できなかった。そこでグルコースモノミコール酸(GMM)を搭載したウシ結核菌弱毒化ワクチン株BCGがGMM特異的T細胞応答を誘起できることに着目し、リポペプチドを搭載したBCGを用いた感作手法を検討した。B型肝炎ウイルス(HBV)S1タンパク質に由来するリポペプチド(C14-S1)を搭載したBCGを上記トランスジェニックマウスに2回皮下接種すると、C14-S1特異的CTL応答が誘起できることがわかった。今後、最適化を行うとともに、誘起されるT細胞応答の特質を解明する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アカゲザルリポペプチド抗原提示分子を発現したTAP欠損マウスを樹立し、リポペプチド搭載BCGを接種することにより、リポペプチド特異的T細胞応答が誘起できることが明らかとなった。次年度以降に向けて、リポペプチド特異的T細胞群の特質を個体レベルで解明する研究基盤が確立された。
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Strategy for Future Research Activity |
リポペプチドワクチンの可能性を追究するためには、リポペプチド感作の有効化(リポペプチド搭載BCGを用いた感作手法の最適化)が必須であり、樹立を完了したTAP欠損Mamu-B*098トランスジェニックマウスラインを活用して検討を進める。それとともに、誘起されるT細胞応答の質の評価およびメモリー応答の多寡を検証することが肝要である。これらの解析はストレートフォワードであり、順調に展開できると考える。他方、研究代表者は最近、ヒトリポペプチド結合HLAクラス1分子を同定した。この分子を発現したトランスジェニックマウスを作製し解析することにより、ヒトワクチンの開発に向けた基盤が確立できると期待される。
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