2022 Fiscal Year Annual Research Report
グリオーマ幹細胞を標的とした独自多面的治療戦略に基づく新規治療法開発の試み
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21H03040
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
北中 千史 山形大学, 医学部, 教授 (70260320)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膠芽腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
グリオブラストーマの再発を防ぎ長期予後改善を目指す上で、腫瘍中のがん幹細胞を標的とする治療法の開発は一つの重要なカギを握るものと考えられている。申請者らはこれまで独自のグリオーマ幹細胞研究を展開し、シグナルキナーゼJNKの活性を阻害することでグリオーマ幹細胞の幹細胞性を、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化(OXPHOS)を阻害することでその生存を、それぞれ抑制できることを示してきた。本課題ではこれらの知見を踏まえ、JNK阻害薬とOXPHOS阻害薬のそれぞれについて既存薬のスクリーニングを行いつつグリオーマ幹細胞の幹細胞性ないし生存を抑制できる薬剤を探索することに加え、さらにこういった研究を展開させて、OXPHOS阻害薬に限らず幅広くグリオーマ幹細胞選択的殺傷効果を有する薬剤を探索したり、あるいは逆にグリオーマ幹細胞阻害効果を持つ薬剤の非がん幹細胞グリオブラストーマ細胞に対する効果についても検討を行い、総合的にグリオブラストーマの新規治療開発に資する成果を得るべく研究を進めている。 2022年度については、JNK阻害薬、OXPHOS阻害薬スクリーニングの過程で見出したHDAC阻害薬domatinostatがグリオーマ幹細胞の増殖を選択的かつ効果的に抑制することを見出した。また、JNK阻害作用をもちグリオーマ幹細胞分化誘導効果を有する小分子キナーゼ阻害薬CEP1347の非がん幹細胞グリオブラストーマ細胞に対する効果を検証する過程で、CEP1347がグリオブラストーマに多い野生型p53発現細胞においてMDM4発現抑制を介してp53経路を活性化し、効果的に増殖抑制効果を発揮することを見出した。また、グリオーマ幹細胞においてホスホリパーゼCεがJNKを介してその幹細胞特性の維持に寄与していることを明らかにし、新たなグリオーマ幹細胞治療標的となり得る可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グリオーマ幹細胞に対する新たな治療薬、新たな治療標的を見出したのみならず、がん幹細胞・非がん幹細胞を問わずグリオブラストーマ細胞に対して有効な薬剤を見出し、研究成果を公表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
新規薬剤のスクリーニングとともに、すでに見出した候補薬のさらなる解析を進める。
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