2022 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト胎盤幹細胞を用いた革新的な周産期疾患モデリング
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21H03072
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岡江 寛明 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (10582695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 峻 東北大学, 医学系研究科, 助教 (40885670) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒト胎盤 / 栄養膜幹細胞 / 妊娠高血圧腎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヒト胎盤幹細胞(TS細胞)を活用し、妊娠20週以降の高血圧と臓器障害を特徴とする妊娠高血圧腎症の発症機構に迫ることである。我々は以前、妊娠初期のヒト胎盤からTS細胞を樹立する手法を確立したが、同様の手法を妊娠中期以降の胎盤に適用することはできなかった。昨年度までに、転写因子A、リプログラム因子Bの一過性発現と、細胞増殖抑制因子CおよびDのノックダウンを組み合わせることで、妊娠中期以降の胎盤から効率良くTS細胞を樹立する手法を確立した。本年度は、早発型妊娠高血圧腎症20例よりヒトTS細胞を樹立した。さらに、昨年度までに樹立した満期胎盤由来の正常TS細胞14例をコントロールとして、妊娠高血圧腎症への関与が指摘されている血管新生調節因子FLT1およびPlGFの分泌量を解析した。具体的には、ヒトTS細胞を合胞体栄養膜細胞へと分化誘導し、FLT1とPlGFの分泌量をELISAによって定量した。その結果、妊娠高血圧腎症に由来するヒトTS細胞において、PlGF分泌量の有意な減少が観察された。一方、FLT1の分泌量は上昇傾向であった。この結果は、妊娠高血圧腎症を発症した患者の血中におけるFLT1およびPlGF量の異常とよく一致する。妊娠高血圧腎症の発症には、血管調節因子の分泌異常に加えて、絨毛外栄養膜細胞の子宮への浸潤異常が関与すると考えられている。そこで、妊娠高血圧腎症由来のTS細胞を絨毛外栄養膜細胞へと分化誘導したところ、正常TS細胞に比べて浸潤能が有意に低下していることが明らかとなった。以上より、ヒトTS細胞を用いて妊娠高血圧腎症の表現型を一部再現することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、妊娠高血圧腎症に由来するヒトTS細胞を樹立した。さらに、得られた細胞を用いて、妊娠高血圧腎症の特徴である血管調節因子の分泌異常と絨毛外栄養膜細胞の浸潤異常を再現することに成功した。よって、研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シークエンサーを用いた遺伝子発現、ヒストン修飾、DNAメチル化等の解析を行うことで、樹立したヒトTS細胞の性質の詳細な解析を行う。さらに、得られたデータをもとに、妊娠高血圧腎症において血管調節因子の分泌異常や絨毛外栄養膜細胞の浸潤異常が引き起こされる原因を推測する。
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