2022 Fiscal Year Annual Research Report
Integrated understanding of molecular mechanisms of osteosarcoma development focusing on Myc super-enhancer
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21H03113
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
伊藤 公成 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (00332726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神崎 秀嗣 秀明大学, 看護学部, 教授 (60807345)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 骨肉腫 / RUNX / Myc / p53 / TGF-β |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで骨肉腫発症メカニズムの解明を目指し、骨肉腫モデルマウス;Osx-Cre;p53f/fマウス(骨芽細胞特異的p53欠損マウス/OSマウス)を使用して、Runx転写因子の機能を検討してきた。その結果、p53非存在下でRunx3がc-Mycの過剰発現を誘導することが、骨肉腫発症の基盤分子機序であることを明らかにした。しかしp53欠損下でRunx3によるMyc過剰発現を惹起する環境要因はこれまで不明であった。そこで、骨肉腫発症における微小環境を考慮し、種々の増殖因子・サイトカインを検討したところ、腫瘍悪性化因子TGFβが、スーパーエンハンサー: TGFβ-MycSEを介しRunx3依存的にMycの発現誘導をもたらすこと、それはp53欠損下でのみ観察される現象であることを見出した。そこで、それらの意義を検討するため、独自に次の1~4に示すような遺伝子改変マウスラインを作成した。 1.TGFβ-MycSE を欠失したマウスライン(TGFβ-MycSEΔ)。2.TGFβ-MycSE を組織特異的に欠損できるよう、TGFβ-MycSEをLoxp配列で挟んだマウスライン(TGFβ-MycSE flox)。3.TGFβ-MycSEの中心に存在するRunx転写因子結合配列のみを欠損したマウスライン(TGFβ-MycSERx m/m)。4.TGFβタイプ2受容体を欠損したマウスライン(Tgfbr2 flox)。 これら4種類のラインをそれぞれOSマウスと交配させ、骨肉腫の発症と寿命を観察している。これまでのところ、すべてのラインにおいて、OSマウスと比較して、骨肉腫の発症が抑制され寿命が延長した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨肉腫細胞においてTGFβによるRunx3依存的Mycの発現誘導を観察した。さらに、この分子機序で必須なゲノム上のエレメント候補TGFβ-MycSEを見出した。そこで以下の遺伝子改変マウスを作出し、OS マウスと交配し、骨肉腫発症に及ぼす影響を確認している。マウスラインの作出と観察は研究代表者(伊藤)が実施し、得られたデータの処理を研究分担者(神崎)が担当している。 1. TGFβ-MycSE またはTGFβ-MycSE 中のRunx 配列を欠損させた(TGFβ-MycSEΔ、TGFβ-MycSE floxまたはTGFβ-MycSERx m/m)マウスを作製し、OS マウスと交配させ、OS;TGFβ-MycSEΔ、OS;TGFβ-MycSE flox/floxまたはOS;TGFβ-MycSERx m/m マウスを作出した。 2. Tgfbr2 floxマウスを導入し、OS マウスと交配させ、OS;Tgfbr2 flox/+マウスを作出した。 予定どおり、上記の1と2で得られた各ライン数十匹を用意し、観察できた。期待したようにすべてのラインにおいて、OSマウスと比較して、骨肉腫発症が抑えられ寿命が延びている。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の4つのマウスラインを各数十匹用意し、骨肉腫発症の時期、頻度、そしてそれぞれのマウスの寿命を、1年以上かけて観察してきた。 1.OS;TGFβ-MycSEΔ、2.OS;TGFβ-MycSE flox/flox、3.OS;TGFβ-MycSERx、4.OS;Tgfbr2 flox/+ その結果、4つのラインすべてにおいて、OS マウスと比較して、有意に骨肉腫発症時期が遅れ、頻度が低下し、マウスの寿命が延びた。よって、p53遺伝子欠損型の骨肉腫発症において、TGFβは悪性化因子として機能していることが判明した。そこで今後は、骨肉腫を発症したOSマウスにTGFβ阻害剤を投与して、抗腫瘍効果が得られるかどうかを検証する(担当;伊藤)。さらに、その結果の統計処理を行う(担当;神崎)。
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