2021 Fiscal Year Annual Research Report
弱毒生インフルエンザワクチンの国産開発に資する低温増殖型組換えウイルスの性状解析
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21H03188
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
内藤 忠相 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (50455937)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 弱毒生ワクチン / 組換えウイルスワクチン / 低温増殖馴化ウイルス / プレパンデミックワクチン開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年/2022年冬シーズンのスプリットワクチン株に選定されたA型インフルエンザウイルス流行株であるA/Victoria/1/2020/H1N1株、およびA/Tasmania/503/2020/H3N2株のヘマグルチン(hemagglutinin: HA)遺伝子をクローニングした。弱毒性のPR8実験室株(A/Puerto Rico/8/34)を用いて、我々の研究グループが新規に単離した低温増殖馴化型の組換えインフルエンザウイルス株にそれらHAゲノムを組込むことで弱毒生ワクチン候補株を作出した。 加えて、既存の弱毒生ワクチンFluMistの特性を付与するアミノ酸変異を、PR8株のポリメラーゼサブユニットであるPB1およびPB2に導入したFluMist型PR8ウイルス(PB1-K391E/E581G/A661T変異およびPB2-N265S変異)を作出した。さらに、FluMist型PR8ウイルスにA/Victoria/1/2020/H1N1株およびA/Tasmania/503/2020/H3N2株のHAゲノムを組込んだFluMist型弱毒生ワクチン株を作製した。 B型ウイルスに由来する低温増殖馴化株の単離および弱毒生ワクチン母体株の創出を試みるため、B型ウイルスの逆遺伝学システムの構築を試みた。2021年/2022年冬シーズンのスプリットワクチン株に選定されたB型インフルエンザウイルス流行株であるB/Victoria/705/2018株、およびB/Phuket/3073/2013株の全ウイルスゲノムをクローニングした。各株の8分節からなるウイルスゲノムをゲノム発現プラスミドに組込むことで、B型インフルエンザワクチン株の開発に資する人工ウイルス合成システムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、A型インフルエンザウイルスの新規弱毒生ワクチン候補株として応用する組換えウイルス材料を作製した。培養細胞を用いた感染実験の結果より、新規弱毒生ワクチン候補株は既存の弱毒生ワクチンFluMist株と同様な低温増殖馴化性を獲得していた。 B型インフルエンザウイルスの新規弱毒生ワクチン候補株の単離に向けて、近年のB型流行株を基盤とした逆遺伝学システムを構築した。この人工ウイルス合成システムを用いて、B型株を母体とした低温増殖馴化ウイルスを分離する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
FluMist型弱毒生ワクチン株を比較対象に用いて新規弱毒生ワクチン株の抗ウイルス効果を調べるため、マウスを用いた感染実験を行う。具体的には、弱毒生ワクチン株を段階希釈後、マウスに経鼻接種する。その後、弱毒生ワクチン株の病原性について、A/Victoria/1/2020/H1N1株およびA/Tasmania/503/2020/H3N2株の野生株を感染させたマウスと比較する。病原性の指標として、マウス半数致死量、体重減少および肺組織内の子孫ウイルス量を測定する。次に、弱毒生ワクチン株をマウスに経鼻接種することで免疫を付与した後、引き続き野生株を接種するチャレンジ感染実験を行う。一連の結果から、新規弱毒生ワクチン株が発揮するインフルエンザウイルス感染に対する予防効果と重症化阻止効果を検証する。 加えて、B型ウイルスに由来する低温増殖馴化株の単離および弱毒生ワクチン母体株の創出を試みる。
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