2021 Fiscal Year Annual Research Report
「機能未知で未命名な運動応答性遺伝子」による骨格筋ミトコンドリアの量的・質的制御
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21H03332
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
田村 優樹 日本体育大学, 体育学部, 助教 (20794978)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 骨格筋 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、骨格筋において、運動に応答し発現量が低下する新規遺伝子の機能解析を実施した。骨格筋の培養細胞を対象とした試験で、当該遺伝子の発現抑制により、骨格筋のミトコンドリアの量や機能が向上する可能性が示唆された。また、ミトコンドリア以外にも、骨格筋の酸化的エネルギー代謝に関わるタンパク質の発現が当該遺伝子により負に制御されている可能性が示された。続いて、当該遺伝子の過剰発現による影響を評価するために、アデノ随伴ウイルスベクターの構築を行った。まず、EGFPを用いてウイルスベクターのパッケージングの最適化ならびに骨格筋への感染効率および遺伝子導入効率を評価した。アデノ随伴ウイルスベクターは、血清型により、標的細胞への指向性が異なる特徴をもつ本研究では、血清型6および血清型9が骨格筋の培養細胞およびマウスの骨格筋組織に十分な感染効率と遺伝子導入効率を示すことが確かめられた。なお、アデノ随伴ウイルスベクターのパッケージングの際の収量は血清型9の方が高かったことから、本研究では血清型9のアデノ随伴ウイルスベクターを使用することとした。本研究で注目した新規遺伝子をアデノ随伴ウイルスベクターを用いてマウスの骨格筋に導入した結果、ミトコンドリアの呼吸機能の低下などの適応が観察された。この点は、予想された結果であった。一方で、興味深いことに、当該遺伝子の過剰発現により、骨格筋の重量の上昇および関連する細胞内の情報伝達経路の活性化が観察された。当該遺伝子は、酸化的エネルギー代謝を負に制御しているのみならず、骨格筋のサイズを正に制御している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、運動応答性の新規遺伝子の機能解析を行うことが主たる目標であった。培養細胞を対象とした試験では、遺伝子の発現抑制と過剰発現により、当該遺伝子の分子機能が明らかにされつつある。一方で、遺伝子導入効率が高いアデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子導入法の最適化が実施できたことにより、マウス生体を対象とした骨格筋においても当該遺伝子の過剰発現の影響を検討が実施できている。一方で、マウス生体の骨格筋を対象とした遺伝子発現抑制実験については、アデノ随伴ウイルスを用いたshRNAの導入により実施を検討している。しかし、shRNAによる遺伝子発現の抑制効果が大きくないため、shRNA配列の再検討や他の手法を用いた遺伝子発現の抑制方法も検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上記の課題を解決するために、マウス生体の骨格筋を対象とした遺伝子発現の抑制実験を実施するために、shRNA配列の最適化やCRISPR/Cas13を用いたRNAを標的としたゲノム編集技術の導入を進める。また、今年度に引き続き、運動応答性新規遺伝子の機能解析を進めていく。
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