2021 Fiscal Year Annual Research Report
筋力トレーニングに伴う中枢神経系および骨格筋の適応
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21H03335
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
前大 純朗 立命館大学, スポーツ健康科学部, 助教 (60774586)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金久 博昭 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (50161188)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レジスタンストレーニング / 中枢神経系 / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、研究実施計画に基づき、イギリスのラフバラ大学およびインペリアル・カレッジ・ロンドンと共同で、長期的なレジスタンストレーニングが力発揮中の筋活動に及ぼす影響について、2つの研究成果を報告した。両研究ともに、トレーニングを長期的に(3年間以上)実施している鍛錬者と、トレーニングを実施していない非鍛錬者を対象に、力発揮中の筋力や筋活動、ならびに筋サイズを測定し、比較したものである。 1つ目の研究(Skarabot, Maeo et al. 2021)では、1)電気刺激により誘発した最大複合活動電位(Mmax)は筋サイズと正の相関関係があり、2)最大筋力発揮中における主働筋の筋電図振幅値の絶対値は鍛錬者が非鍛錬者より大きいものの、これをMmaxで正規化した場合には群間に差がないことを主な知見として報告した。 2つ目の研究(Casolo, Maeo et al. 2021)では、最大下での様々なレベルの力発揮中における運動単位の発火頻度と筋力の関係(傾き)は、筋力を絶対値で評価した場合には鍛錬者が非鍛錬者より大きいが、筋力を個人の最大値に対する相対値で評価した場合には群間に差がないことが明らかとなった。なお、両研究に共通して、最大筋力と筋サイズはともに鍛錬者が非鍛錬者よりも約50-70%大きかった。 上記の知見は、長期的なレジスタンストレーニングによる最大筋力の増加および最大下での力発揮中における力の制御(増減)は、主に中枢神経系よりも筋サイズの影響を受けることを示唆するものである。なお、これらの研究はともにJournal of Applied Physiologyに掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今後実施予定の縦断研究(トレーニング介入実験)に向けて、その基盤となる横断研究に関する研究成果を報告することができたため、順調に進展していると感じている。より具体的には、「研究実績の概要」に記載の通り、トレーニングを長期的に実施している鍛錬者と、トレーニングを実施していない非鍛錬者における力発揮中の筋活動の比較について、関連領域で主要な学術誌の一つであるJournal of Applied Physiologyに掲載されたためである。また、研究代表者が筆頭著者となっている複数の論文についても、現在、投稿に向けた最終段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、2022年度には1年間のトレーニング介入実験の実施を予定していた。しかし、長引くCOVID-19の影響により、2022年4月現在での長期的な介入実験の開始は、介入途中での実験中断のリスクが大きいと判断した。そこで、上半期においては、これまでの横断研究を発展させることを予定している。より具体的には、力発揮中における皮質脊髄路の興奮性や抑制性を定量化することができる経頭蓋磁気刺激法(Maeo et al. 2021)について、既存の刺激装置に加え、その測定精度・再現性の向上に資するナビゲーションシステムを新たに導入することができたため、それを用いた測定技術の習得および予備実験を行う。加えて、力発揮中における運動単位の振る舞いを識別可能な高密度表面筋電図法(Casolo, Maeo et al. 2021)についても、海外の共同研究先と同じ機器を、研究代表者の所属機関に新たに導入することができた。 上記を踏まえ、十分な予備実験を行った後に、横断研究として、3年間以上の長期的な筋力トレーニングを実施している鍛錬者と、筋力トレーニングを実施していない非鍛錬者を対象に、力発揮中の皮質脊髄路の興奮性や抑制性、ならびに運動単位の振る舞いを測定し、それらの違いを鍛錬者と非鍛錬者で比較するとともに、筋力を規定する因子を探究する。下半期には、COVID-19の状況を勘案し、可能であれば1年間のトレーニング介入実験を開始する。
参考文献: Maeo et al. (2021). Corticospinal excitability and motor representation after long-term resistance training. Eur J Neurosci 53, 3416-3432.
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Research Products
(3 results)