2021 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム編集技術を応用した食事および運動介入による加齢性疾患予防の分子機構解析
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21H03367
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
千葉 卓哉 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (40336152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石神 昭人 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (50270658)
近藤 嘉高 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師(任期付) (20507397)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 老化 / 老化関連疾患 / DNA修復 / ゲノム編集 / がん / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、老化とがん化の関連性や接点について、我々が同定した分子の機能解析を中心として明らかにしようとする課題である。がん細胞はゲノム構造異常が蓄積することによって生じ、老化は発がんの主要な危険因子の一つでもある。我が国のみならず全世界的に見ても、がんの撲滅は今なお重要な医科学領域の研究課題である。 我々はこれまで、糖や脂質代謝の調節に重要なインスリンシグナル系によって制御される分子が、老化や腫瘍発生の制御に重要な役割を持つ可能性を明らかにしてきた。本研究では、このシグナル系と関連している細胞内シグナル伝達系に着目し、老化および発がん制御を分子レベルで解明することを目指している。 本年度は、我々が注目している遺伝子Xについて、この遺伝子の機能阻害によって肝がんの発症・進行が抑制されることを示唆する結果が、ヒト肝がん由来の培養細胞、および実験動物であるマウスをもちいた研究から示唆された。さらに、データベース検索によって、遺伝子Xが肝がんの予後不良マーカーとして機能している可能性を見出した。 次に、発がん防御に重要なDNA二本鎖切断修復に関わるシグナル分子の役割を、ゲノム編集技術を応用した独自の解析手法をもちいて明らかにすることを目指した研究を行った。その結果、DNA二本鎖切断によって誘導される修復経路において、PIFヘリケースが、特にA-Tが繰り返される配列を含む、染色体の脆弱な領域におけるDNA修復に重要な役割を持つことを明らかにした。さらにある種の変異を持つPIFヘリケースが、乳がん細胞において発現しており、この細胞においてはDNA二本鎖切断によって誘導される修復経路が正常に機能しないことが示唆された。このことから、この遺伝子変異が乳がんの病態発症に重要な役割を持つことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子Xの新たな機能として、細胞障害に対する生体の防御システムとして機能している可能性を示唆する実験結果を得ており、今後インパクトの高い研究成果がもたらされる見込みが高いため、上記の通り評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、栄養学的介入または運動介入が、これらのシグナル系をどのように変化させるかを解析することで、老化とがん化のmissing linkを解き明かし、日常生活で実行可能な発がん予防法の科学的基盤を確立する。
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Research Products
(5 results)