2022 Fiscal Year Annual Research Report
未来予測技術で切り拓く疑似ゼロレイテンシ・テレイグジスタンス
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21H03409
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
粟野 皓光 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (10799448)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遠隔操作ロボット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、遠隔操作ロボットにおける通信遅延や感覚情報伝送の不完全性による操作性の悪化を改善するため、機械学習を用いてロボットに感覚情報や操作の意図を予測し、先回りして提示することで通信遅延を隠ぺいし、操作性を向上させることを目的としている。 今年度は、操作コマンド予測器を組み込んだシステム全体を構築し、遠隔操作される上半身ヒューマノイド、ガイダンスを提示する力触覚デバイス、操作者の操作意図を予測するニューラルネットワークから成るシステムにより、タスク遂行に要する時間を有意に削減できることを実証した。 具体的には、遠隔操作によって柔軟物を折り畳むタスクを想定し、ガイダンスを提示することでタスク遂行に要する時間を9%削減できることが明らかになった。また、ニューラルネットワークの予測が誤る可能性を考慮し、予測の信頼度に応じて動的にガイダンス提示強度を調整する機構を組み込んだ。 この機構により、操作意図を確率分布として扱い、予測に自信がある場合は分散が小さく、自信が無い場合は分散が大きくなるようにニューラルネットワークを学習させた。予測の信頼度に応じてガイダンス提示強度を調整した結果、予測信頼度を加味しない場合と比較して更に16%のタスク実行時間削減が可能であったことが明らかとなった。 本年度の研究は、遠隔操作ロボットの操作性向上に貢献するとともに、機械学習や信頼度に基づくシステムの設計・制御方法に関しても示唆を与える成果であり、今後の関連研究にも大きな影響を与えることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度に構築した仮想マシンをベースにした上半身ロボットの制御環境を用いることで、ソフトウェアのバージョン差異等の調整に時間を取られることなく短期間で様々な実験を実施することが出来た。結果として、操作意図を予測し、これを操作者に力触覚ガイダンスとして提示することで、タスク実行に要する時間を有意に削減できることが明らかとなった。また、予測結果の信頼度に応じてガイダンスの提示強度をダイナミックに調整することで誤ったガイダンスの提示による作業効率の悪化を最小限に抑えることが可能となり、さらなるタスク実行時間の削減が可能であることが確認できた。以上のことからおおむね 順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの取り組みにより、操作意図を予測して操作者へとガイダンスを提示することでタスク実行時間を削減させることが実証できた。この成果をもとに、今年度は以下の内容に取り組み、AIによる遠隔操作アシスト技術の確立を目指す。 * AIアシストによる心的ストレスの変化:本年度の取り組みではタスク実行時間の削減という観点でのみ評価してきた。一方で、メンタルヘルスへの注目が集まる昨今では、操作者の心的ストレス低減という観点でも評価が必要であろう。そこで、心拍センサを利用して操作者の心拍揺らぎを測定し、AIアシストの有無でストレスがどのように変化するかを実測により明らかにする。 * 作業効率を悪化させない最小ハードウェア:本年度のシステムではGPU上で動くニューラルネットワークによって操作意図を予測している。一方で、実際のロボットにシステムを組み込む際には筐体スペースや電力制約からFPGA等の組み込み機器で動作させることが望まれる。そこで、作業効率を悪化させずに、どこまでハードウェアを簡素化できるのか実験によって明らかにする。
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