2021 Fiscal Year Annual Research Report
身体変化をゼロに保ちつつ知覚・情動を変容させるゼロハプティクス技術基盤の構築
Project/Area Number |
21H03474
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
黒田 嘉宏 筑波大学, システム情報系, 教授 (30402837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 晶一 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (10323833)
金子 暁子 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40396940)
田辺 健 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (60847557)
井野 秀一 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70250511)
羽田 康司 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80317700)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ハプティクス / 非対称刺激 / 非接触冷覚提示 / 牽引力錯覚 / 運動誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は、身体変化を時間的にゼロに保ちつつ感覚・知覚・生理的応答を変容させるゼロハプティクス技術基盤を確立することである。2021年度は、本課題における基盤技術である非対称温冷機能および非対称振動機能の技術開発を行い、さらに応用の調査および基礎検証を行なった。 非対称温冷機能については、冷気流による皮膚温度変化モデルを構築し、非対称に温冷刺激を与えることで冷覚のみを連続的に知覚させる非接触連続冷覚提示技術を開発した。人を対象に実験した結果、最大100%の確率で冷覚を連続的に感じることを確認し、本技術について特許申請を行った。また、手以外へのLED光による温度提示の検討を行った結果、LED光による加温は皮膚が露出している部分で効果が高いことが分かった。 また、壁面衝突噴流の流動挙動の計測可能性について検討し、液中に液相噴流を噴出した時の噴流流動挙動と周囲流体の相互関係について調査した。特に、噴流側の液体には蛍光染料を添加し、両液相にトレーサ粒子を添加して可視化計測を実施した。実験の結果、周囲流体との相互作用によるせん断応力により液膜内速度分布が影響を受け、速度境界層の発達過程が気液体系と異なることを示し、跳水半径が理論よりも小さくなることを明らかにした。さらに、椅子型のデモ機を開発し医師に体験いただき、医学的見地から末梢神経感度の定量化に向けた議論を行なった。 また、非対称振動機能開発については、ゼロハプティクス技術を用いて、身体動作を誘導できることを検証した。具体的には、振動刺激に基づく牽引力錯覚を利用して白杖の振り幅を誘導する実験が実施された(晴眼者10名、視覚障害者2名)。牽引力錯覚を利用して振り幅を誘導する前と後で目標幅との誤差を比較した結果、有意に誤差が低下することが確認された。つまり、牽引力錯覚を利用することで、特定の運動を誘導できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度であった2021年度において、本課題における基盤技術の一つである非対称温冷機能について、その効果を人を対象とした実験で確認し、開発技術の特許を申請することができ、基盤技術を創出することができたといえる。またデモ機を開発して医師に効果を試していただくなど、応用に向けた調査も進めることができた。また、可視化技術の開発など高性能化に向けた取り組みも行うことができた。もう一つの基盤技術である非対称振動機能については、応用システムを開発し、特定の運動を誘導できることが明らかになった。具体的には、視覚障害者が白杖を用いて歩行する際に、進行方向の1~2歩前の情報の収集や安全性の確保のために、身体の正中線を中心に左右均等に白杖を振り、地面をタッチする操作技術である。このように基盤技術の創出に加えて、応用における効果の検証も実施することができ、想定以上に当該課題を進めることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後について、本課題における基盤技術の一つである非対称温冷機能については、2021年度に創出した技術の高度化として、より違和感の少ない連続冷覚提示を実現するための提示装置および刺激パターンの開発を行う。また、応用システムの設計およびテストを行う。もう一つの基盤技術である非対称振動機能については、2021年度に実現した非対称振動による白杖における運動誘導の高度化に向けて装置や提示手法の改良を進める。
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