2021 Fiscal Year Annual Research Report
Vulnerability of bacterial community to antibiotics in aquatic environments and its effect on biogeochemical processes
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21H03608
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
濱 健夫 筑波大学, 生命環境系, 名誉教授 (30156385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻村 真貴 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10273301)
須田 亙 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 副チームリーダー (20590847)
渡邊 圭司 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 専門研究員 (50575230)
大森 裕子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80613497)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 抗生物質 / 細菌群集組成 / 浮遊性細菌 / 付着性細菌 / 物質循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、陸域の水圏環境における抗生物質濃度の把握と、細菌群集組成の把握を行った。 1)対象水域の設定:河川、湖沼および地下水の対象水域として、人間活動、下水処理場および畜産の影響を考慮し、12測点(河川、7測点;湖沼、4測点;地下水、1測点)を設定し、現場の物理化学環境の測定を実施するとともに、抗生物質および細菌群集等の測定用試料を採取した。 2)固相抽出法の検討:抗生物質濃度の測定に必要な抗生物質濃度を確保するため、固相抽出法を用いた濃縮方法の検討を行った。既知濃度の標準物質を用いた固相抽出の結果、調査した3種類の抗生物質の回収率は46%から78%であった。 3)抗生物質濃度:固相抽出した12試料に含まれる5種類の抗生物質(アンピシリン、セフジニル、エリスロマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン)濃度を、LC/MS/MS法を用いて測定した(依頼分析)。アンピシリンは12測点中5測点において、テトラサイクリンについては6測点において存在が確認された。両抗生物質が確認された測点は、中川の八条橋と中川橋、および綾瀬川の中の橋であり、いずれも河川下流域で人間活動および下水処理場からの流出が起源と考えられる。セフジニル、オキシテトラサイクリン、エリスもマイシンの3種類については、定量限界以上の濃度は全ての試料において、定量限界以上の濃度は確認されなかった。 4)細菌数および群集組成:12測点における細菌数は、0.2-6.8x10^6/mLの間で計測され、一般に河川上流域で低く、下流域で高い傾向にあった。また、浮遊性細菌と付着性細菌を3μm孔径のろ紙を用いたろ過により分別し、16S rRNAの塩基配列を用いて明らかにした。河川試料による差異が認められ、培養実験に用いる測点の決定に有益な情報が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)2年次以降に実施する抗生物質添加実験に用いる試料採取地点を設定するため、初年度は河川の上流域から下流域、湖沼の流入域から流出域、および地下水と、広範な環境下における抗生物質と細菌群集に関する情報を得ることができた。 2)抗生物質に関しては、測定対象とした日本での使用量が多い5種類の抗生物質中、アンピシリンとテトラサイクリンの2種類において存在が確認された。これにより、細菌の培養実験に用いる抗生物質を特定することが可能となった。 3)採取した試料に含まれる細菌数は、フローサイトメトリーを用いて測定し、対象測点環境に応じた細胞数が確認された。また、本研究の特徴である、浮遊性細菌と付着性細菌の分別について、3μm孔径のろ紙を用いたろ過法を用いたが、DNA濃度や群集組成の測定により、その有効性が確認された。 4)蛍光顕微鏡を用いた観察では、試料により浮遊性細菌と付着性細菌の存在比が、測点により異なることが見いだされた。このうち、浮遊性細菌についてはフローサイトメータにより有効に計数されていると考えられるが、凝集体に多数生育する付着性細菌については、正確に測定されていないことが示唆された。細菌数は群集組成とともに、抗生物質の影響を評価するために重要なパラメーターとなるため、今後の改善が必要と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
河川、湖沼および地下水から合計5測点を選び、細菌群集を含む試水に抗生物質を添加して培養することにより、細菌への抗生物質の影響を評価する。 1)実験対象試料採水:前年度の研究を通して明らかとなった抗生物質の濃度、および細菌の生活形態の特徴から、河川水として、中川・道橋、中川・中川橋、綾瀬川・中の橋の3測点を、湖沼水として、霞ヶ浦・行方、地下水として筑波大学・アイソトープ解析センター井戸、の合計5測点を対象とする。 2)培養実験:添加する抗生物質としては、前年度に存在が確認されたテトラサイクリンを使用する。採取した試水に、抗生物質を、0、2、200 ng/L、20 ug/L、2、200 mg/Lの6段階の濃度で添加し、暗中で20℃の条件下で培養を行う。培養開始時、3日、10日後に試料を採取し、分析を行う。生活様式による細菌分別を行うため、孔径3 umのフィルターを用いて濾過し、フィルターを通過する遊離性細菌と、フィルター上に捕集される付着性細菌とに分別する。 4)分析:採取した細菌のDNAを抽出し、16S rRNAの特徴的な塩基配列を用いて、バクテリア群集組成を明らかにする。細菌数については、落射型蛍光顕微鏡およびフローサイトメータを用いて測定を行う。また、懸濁態有機炭素濃度を元素分析計により明らかにする。 5)総合解析:バクテリア群集組成の変化から、組成に影響を与える抗生物質の濃度について特定を行うと共に、バクテリア分類群による抗生物質に対する感受性の違いを評価する。また、遊離性および付着性の生活様式と感受性との関係を明らかにし、生活様式の重要性を検討する。さらに、培養期間中における懸濁態有機炭素の分解速度の比較から、バクテリアの有機物分解機能に対する、抗生物質の影響を評価する。
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