2021 Fiscal Year Annual Research Report
コメのメチル水銀汚染リスク低減のための土壌環境評価法の検討
Project/Area Number |
21H03621
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
児玉谷 仁 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (30434468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 正浩 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 研究員 (60435849)
武内 章記 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (10469744)
一谷 勝之 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (10305162)
神崎 亮 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (50363320)
冨安 卓滋 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (60217552)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コメ / メチル水銀 / 土壌 / 分別定量 / 品種 |
Outline of Annual Research Achievements |
鹿児島大学農学部付属農場の1枚の水田(土壌総水銀濃度:0.2 mg/kg)を利用し、遺伝子的に大きく異なるコメの品種(WRC系統59品種)を育て、各品種の玄米に含まれる水銀濃度を測定した。この結果、最高 7.1 ng/g 最低1.7 ng/g (平均値 3.2 ng/g, 中央値 3.0 ng/g, n = 59)となり、同一土壌で育成した稲であっても品種によって含まれる水銀濃度が異なることを確認した。一方、水銀汚染土(水田土壌に2015年に10 mg/kgとなるように水銀イオンを添加し、毎年稲の栽培に利用している土壌、土壌総水銀濃度:8 mg/kg)を利用し、予備的に選ばれた5品種についてポット栽培を行った。2週間に一度、土壌を採取し、土壌のメチル水銀濃度の変化および稲に含まれる水銀量を測定した。玄米の水銀濃度は、日本晴(WRC1)で0.25 mg/kg となり、含まれる水銀のほとんどがメチル水銀であることを確認した。土壌のメチル水銀濃度が、湛水から1ヵ月程度で最大(約0.1 mg/kg)となり、徐々に低下していくこと、一方、稲は品種により出穂までの育成期間やバイオマスが大きく異なることから、土壌メチル水銀の影響を受けやすい、受けにくいの差が生じ、玄米の水銀濃度に品種差が生じている可能性も示唆された。 土壌におけるメチル水銀生成と、存在する無機水銀形態の関係を明らかにするため、土壌に含まれる無機水銀形態を簡易に分析する手法について検討を進めた。様々な水銀汚染地域で得た土壌試料を利用し、加熱温度を段階的に変化させつつ、気化する水銀量を評価することで、存在する水銀形態の判別を試みた。試料によっては特徴的な結果が得られたが、気化温度と水銀形態の関係は明確には確認できなかった。今後、試料数を増やしつつ、存在形態別分析法として一般的に用いられている逐次抽出法と比較していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた日本各地の水田土壌試料の採取が、コロナ禍のため実施できず、土壌におけるメチル水銀生成と土壌化学組成の関係については、研究を進められなかった。しかし先行して進めた稲の品種と水銀濃度の関係についての実験が、栽培も順調に進み良質な試料が得られたため、全体としては順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
日本各地で採取した水田土壌を利用し、水銀イオンを添加して湛水に保つ室内実験により、メチル水銀濃度と、酸化還元電位の変化、さらに微生物叢の変化を追跡することで、土壌組成とメチル水銀生成に関する知見を得る。稲の栽培実験は、2021年度の農場栽培で特徴的な水銀濃度が得られた品種について、水銀汚染土での栽培を進める。特に土壌メチル水銀濃度の変化と、育成期間の関係が品種差に影響しているかについても確認するため、育成期間が長いものは短日処理して出穂までの期間を可能な限り統一する。一方、土壌の湛水期間が長くなると、土壌のメチル水銀濃度が低下することを利用し、田植え前に湛水状態をコントロールした土壌を準備し、同一品種を育てることで、稲に取り込まれる水銀量が変化するか確認を進める。
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Research Products
(1 results)