2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the mechanism of mercury isotopic fractionation in the environment
Project/Area Number |
21H03623
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
大野 剛 学習院大学, 理学部, 教授 (40452007)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深海 雄介 学習院大学, 理学部, 助教 (10754418)
伊地知 雄太 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (10911258)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水銀同位体 / 同位体分別 / 光化学反応 / 非質量依存 |
Outline of Annual Research Achievements |
水銀は人体に有害であり、その揮発性から地球規模の汚染が問題になっている。大気圏や水圏における水銀の循環を理解することは、人間への影響を低減するために重要な研究課題である。近年、水銀汚染の起源を調べるために、水銀の同位体比が注目されている。しかし、地球規模での水銀同位体比変動のメカニズムは未だ不明点が多い。本研究では、自然界で観測される水銀同位体比変動のメカニズムを解明することを目指し、光化学反応における水銀同位体分別実験を進めている。 本年度は水銀同位体分別のpH依存性を調べるための実験手法を検討した。具体的には、環境レベルの水銀(Hg2+)を含む反応溶液を用意し、この反応溶液を塩基性条件で、紫外線を用いて水銀(Hg2+)の光還元反応を行った。その結果、質量に依存した同位体分別と質量に依存しない同位体分別(Δ199Hg)がそれぞれ観察された。質量の小さい同位体が質量の大きい同位体に比べ還元されやすく、質量に依存した同位体分別は1質量あたり0.8パーミルであった。また、質量に依存しない同位体分別(Δ199Hg)も観察された。これらの結果は199Hgの原子核が持つ核スピンの効果が作用している可能性が示唆され、塩基性条件下では、原子核体積の違いに起因する同位体分別と核スピンの有無に起因する核磁気効果が作用すると考えられる。今年度確立された実験手法を用いて、次年度以降のpHを制御した環境下での実験を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた水銀の同位体分別実験の立ち上げが終了し、当初の計画通りに同位体分別実験を進めることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
反応溶液のpHを変化させた水銀光還元実験を進めることにより、水銀の同位体分別が原子核体積の違いに起因する同位体分別と核スピンの有無に起因する核磁気効果の二つが作用するとの作業仮説を検証するため、今後は、反応溶液の条件を制御し、水銀化学種の存在量と Δ199Hg の大きさの関係を明らかにする。さらには、非質量依存の同位体効果を引き起こす重要な化学種を特定する予定である。
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Research Products
(3 results)