2021 Fiscal Year Annual Research Report
天然および人工の有機・無機接着界面から発想する新たなバイオベース固化技術の創出
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21H03627
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中島 一紀 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50540358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 了 北海道大学, 工学研究院, 教授 (00304022)
五十嵐 健輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (90759945)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイオセメント / 天然高分子 / イガイ接着タンパク質 / 刺激応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,天然に存在する,あるいは人工的に創り出した無機物と有機物の接着界面に着目した新しい概念のバイオ固化技術を創出する。具体的には,(A)キチンなどのマトリックス多糖,砂・土を構成する鉱物,セメント物質となるCaCO3の三者を強力に結合できる機能性タンパク質をデザインし,バイオセメントに導入することにより,従来法をはるかに凌駕する強靭な固化を目指す。また,(B)接着や凝集のコントロールが非常に困難であるイガイ接着タンパク質に凝集抑制機能を与え,さらには酵素添加によって接着と鉱物合成機能が同時に誘起されるバイオスイッチ機能を付与した固化システムを開発する。本年度は,上記(A)および(B)を達成するため,下記の項目を中心として研究を実施した。 (1) 鉱物結合ペプチドの探索: ファージディスプレイ法を用いて,固化におけるセメント物質であるCaCO3に結合するペプチド配列の取得を検討した。実験では様々なペプチド配列が取得されたが,それらを比較したところ,有効なコンセンサス配列は得られなかった。ファージの溶出は通常pH2.2付近で行うが,そのpH条件ではターゲット物質であるCaCO3自体が溶出したことも確認され,結合ファージの選抜プロセスであるバイオパンニングの方法を改善する必要があることが示唆された。 (2) 有機物との複合化を目指したタンパク質分子のデザイン: キチン結合タンパク質とカルシウム結合ペプチドを組み合わせた融合タンパク質はキチン上へのCaCO3の析出を促進することが分かっていたため,その融合タンパク質をバイオセメントへ応用した。ウレアーゼを用いて珪砂の固化を行い,一軸圧縮試験により供試体の物理的強度を調べたところ,融合タンパク質とキチンを添加した系では一軸圧縮強度と破壊ひずみが増大し,強度と靭性を兼ね揃えた固化体になることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は,ファージディスプレイ法を用いたCaCO3結合ペプチドの探索と,融合タンパク質を用いた有機-無機のハイブリッド化について主に研究を行った。ファージディスプレイ法では所望のペプチド配列を得ることはできなかったが,その原因についてはある程度絞り込みができたため,手法の改良につなげていきたい。一方,有機-無機のハイブリッド化については,当初の予想を超えた物性の固化体を得ることができ,今後のタンパク質デザインの指標が得られた。 また,より効率的なタンパク質生産を行うために購入したタンパク質精製装置Akta goの納期が世界的なパンデミックの影響により大幅に遅れ,年度内の納入ができなかった。そのため,手動によるタンパク質精製を行っていたが,これまで用いてきた実験方法であるため大きな影響はなかった。 以上より,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオセメントに複合化する有機物(天然高分子)としてキチンを用いてきたが,セルロースなどその他の天然高分子やセルロースナノファイバーなどの機能性高分子の添加の影響を調査する。また,イガイ接着タンパク質を用いた鉱物の凝集・固化とさらなる強度増大について,タンパク質工学的および界面化学的観点から取り組んでいく。
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Research Products
(10 results)