2021 Fiscal Year Annual Research Report
低栄養細菌-マンガン酸化細菌培養系による有機物無添加の坑廃水処理技術の開拓
Project/Area Number |
21H03636
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
宮田 直幸 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (20285191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 美穂 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (70867184)
佐藤 由也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (80711291)
所 千晴 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90386615)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マンガン酸化細菌 / 低栄養細菌 / 坑廃水 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、低栄養細菌群による有機物供給システムと従属栄養細菌によるマンガン酸化システムを内包した微生物集積培養系を利用して、有機性基質の外部供給を必要としないマンガン含有坑廃水処理技術を研究開発することを目的としている。集積培養系において、有機性基質無添加条件で生成したMn酸化物はX線吸収微細構造解析によって平均酸化数3.75、バーネス鉱様の結晶構造を有することが示され、4価Mnを主とする酸化物が生成していたことが明らかになった。炭素安定同位体標識した重炭酸イオンを添加して培養した結果、重炭酸イオン添加濃度に依存した炭酸固定の進行が認められた、なお、この炭酸固定は二価Mnイオンを添加しなくても進行していた。さらに、培養系における遺伝子発現量を解析した結果、二価Mnイオン添加に関わらず特定細菌のRuBisCO遺伝子が高発現していた。以上より、培養系では炭酸固定による有機物生成が起こっていること、及び炭酸固定はMn酸化には依存しないことが示された。 集積培養系の培養物を適宜希釈して平板培地に播種した結果、有機性基質無添加条件でも数多くの細菌コロニーが形成され、有機性基質が制限された貧栄養条件で増殖する、低栄養細菌の存在が示された。それらを分離して同定した結果、9属に帰属された。有機性基質制限条件で低栄養細菌が増殖することで集積培養系に有機性基質が供給されている可能性が示された。 また、マンガン酸化集積培養系を導入した小型バイオリアクターを作製した。石灰石等を充填し、20 mg/L の二価Mnイオンを含む有機性基質無添加の模擬廃水を連続通水した結果、水理学的滞留時間を1日としても1 mg/L以下に処理できることが明らかになった。石灰石上の細菌群集構造を解析した結果、多様な従属栄養細菌が検出され、Mn酸化処理への寄与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)有機物無添加培地で増殖する低栄養細菌の分離では、9属に帰属される多様な細菌種を取得することができた。従属栄養性Mn酸化細菌を分離することはできなかったが、細菌群集解析で複数種を検出できており、培養条件とそれらの存在量との相関関係を明らかにすることができる。 (2)集積培養系の遺伝子発現解析により、特定の細菌の炭酸固定に関する酵素遺伝子が高発現しているとの重要な知見を得ることができた。 (3)集積培養系による炭酸固定能力の存在とその特徴付けを行うことができた(重炭酸イオン濃度依存性、二価マンガン濃度非依存性)。 (4)X線吸収微細構造(XAFS)解析により、Mn酸化物の特徴付けを行うことができた。 (5)接触酸化槽による模擬廃水の処理試験を行い、Mnイオンの十分な処理が行えた。また、細菌群集解析によって、槽内の従属栄養細菌の構成に関する詳細な情報を取得することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
種々の低栄養細菌を分離できたことから、有機性基質無添加条件でのMn酸化における機能解明を早急に進めることにする。第一に増殖特性を明らかにする必要があるが、有機性基質無添加の培地では増殖量が僅かであるため、菌体増殖の指標としてATP濃度を高感度に検出定量できるルミノメーターを使用してモニタリングを試みる。 また、集積培養系全体では炭酸固定能力が見られたが、それが低栄養細菌によるものか明らかにするため、分離株による重炭酸イオンの取込み試験を行い、安定同位体質量分析計を用いて炭酸固定能力を評価する。さらに研究室で保有するモデルマンガン酸化細菌と共培養試験を行い、低栄養細菌のマンガン酸化への寄与について明らかにしたい。低栄養細菌の分離株から数株を選抜し、ゲノム構造の側面からも培養特性や炭酸固定などの有機物供給能力を解析する予定である。 一方で、前年度の集積培養系のRNAseq解析において、特定細菌によるRuBisCOの高発現が示唆されたため、当該細菌近縁株を入手して低栄養条件での機能発現を調査する。以上の検討により、低栄養細菌及び炭酸固定の側面から、集積培養系における有機性基質供給システムを解明したいと考えている。 マンガン含有坑廃水の微生物処理技術の構築では、昨年度構築したマンガン酸化集積培養系を導入した接触酸化槽を引き続き連続運転し、処理特性を調査解析する。特に今年度は槽内にける細菌増殖の挙動を明らかにしたいと考えており、ATP含有量で評価する手法を確立し、バイオマス量が処理性能に及ぼす影響を明らかにしたい。
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