2021 Fiscal Year Annual Research Report
生成ポテンシャルの評価を基軸とした亜酸化窒素の突発的発生現象の機構解明
Project/Area Number |
21H03637
|
Research Institution | Akita National College of Technology |
Principal Investigator |
増田 周平 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70552157)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北條 俊昌 東北工業大学, 工学部, 准教授 (10708598)
寺田 昭彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30434327)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 亜酸化窒素 / 下水処理 / 温室効果ガス / 低炭素化 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球温暖化問題を背景に、水処理プロセス由来の温室効果ガス(GHGs)の排出量の削減が強く求められている。亜酸化窒素(N2O)は、強力な温室効果ガスであり、水処理プロセスから発生することが知られているものの、その生成機構は明らかにされていない。特に、プロセス中に突如として濃度が急上昇する現象-突発的発生-は、N2Oの生成機構の解明と削減手法の開発のために重要な現象である。以上をふまえ、本研究の目的は、水処理プロセスにおけるN2Oの突発的発生機構の明らかにすることとした。 本研究では、3年間の研究において、1年目はN2O生成ポテンシャル評価手法の新規開発、2年目はN2O生成ポテンシャルと実生成量の乖離機構の解明、3年目はN2Oの突発的発生の再現、という段階的アプローチにより目的の達成を計画している。以上をふまえ、初年度はN2O生成ポテンシャル評価手法の新規開発に関する基礎的検討を行った。 具体的には、複数の異なる処理プロセスを行う下水処理場より活性汚泥を採取し、環境条件と基質添加条件を設定したラボ試験を行い、N2Oの生成活性を評価した。環境条件は特に溶存酸素の影響に着目し、溶存酸素濃度を段階的に設定した実験系においてN2Oの生成量の違いを定量的に明らかにした。また、基質添加条件としては、無機態窒素の組成および濃度、また有機物添加条件がN2Oの生成に及ぼす影響を同様に評価した。 また、2年目の試験で実施する予定のリアクターのセットアップおよび予備的培養を開始し、N2Oの生成ポテンシャルを適切に評価するための実験条件に関する検討に着手した。得られた成果の一部は、現在学術雑誌への投稿に向けたとりまとめ作業を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、3年間の研究において、1年目はN2O生成ポテンシャル評価手法の新規開発、2年目はN2O生成ポテンシャルと実生成量の乖離機構の解明を、段階的な目標としている。その点において、1年目はN2O生成ポテンシャル評価手法の新規開発に向けた基礎的知見を獲得できたものの、手法の確立には至らなかった。その要因として、事前に想定していた以上に実処理場における活性汚泥の質的多様性が大きく、N2Oの生成ポテンシャルを一義的に評価可能な条件の解明が難航していることが挙げられる。さらに、新型コロナウィルス感染症の影響により、研究従事者が直接的・間接的に影響を受け研究の進捗に影響を及ぼしたこと、さらに研究に用いる一部の主要資材の調達に遅れがでていることも要因として挙げられる。ただし、2年目のN2O生成ポテンシャルと実生成量の乖離機構の解明に向けたリアクター試験の検討は並行して進めており、プロジェクトの進捗状況にはやや遅れが見られるものの、全体としては目的達成に取り組みを着実に行えていると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響による研究従事者への影響や、資材調達への影響は断続的に続いているため、それらの影響をなるべく緩和するべく、研究体制の再構築や柔軟な対応体制を整備する。具体的には、欠員発生時への迅速な対応を目的とした複数人体制でのタスクシェア、早期の物品調達、研究従事者のオンライン・在宅での研究実施体制の整備、などが挙げられる。 また、これまで得られたN2Oの生成活性試験に関する知見を精査し、N2Oの生成ポテンシャルに影響を及ぼす重要な因子の絞り込みを行う。さらに、実処理場でのN2O生成量に挙動に関する情報を充実させることで、実処理場におけるN2O生成量の多様性を把握し、ラボ内での生成活性試験との関係性に関して考察を深める。以上の取り組みを通じて、N2Oの生成ポテンシャル評価手法の早期確立を目指すとともに、生成ポテンシャルと実生成量の乖離機構の解明に向けたリアクター試験条件の最適化を図る。
|
Research Products
(5 results)