2021 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of energy available of microbial sulfate reduction reaction in spring water and development of new geothermal exploration method
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21H03659
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
井岡 聖一郎 弘前大学, 地域戦略研究所, 教授 (40598520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若狭 幸 弘前大学, 地域戦略研究所, 准教授 (40442496)
天野 由記 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 核燃料サイクル工学研究所 環境技術開発センター, 研究副主幹 (60421674)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地熱 / 硫酸還元反応 / 有効エネルギー / 湧水 / 微生物 / 探査法 / 硫化水素 / 火山 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生可能エネルギーの一つである地熱を利用した発電の有望地を見つけるためには,透視できない地下の熱水・蒸気が賦存している断層,割れ目からなる断裂構造の評価のために様々な探査を行う。熱水は火山活動により発生するため,熱水に含まれる火山活動由来の硫化水素が深部断裂の存在を示唆する重要な指標と考えられる。しかし,低温湧水に含まれる硫化水素は,地下環境の嫌気的な場に存在する微生物が有機酸や水素をエネルギー源とする微生物硫酸還元反応の生成物である可能性もある。したがって,低温湧水中に含まれる硫化水素が火山活動起源か微生物活動起源か判定させる新しい指標作りが必要と考える。本研究では地熱資源探査地域において硫化水素を含んでいる低温湧水について,1)微生物硫酸還元反応が生じた地下水が流出しているのか,2)硫酸還元微生物相は存在するのか, 3)微生物硫酸還元反応に必要な有効エネルギーは存在するのか,4)湧水流出域に有機酸や水素を生成する有機態炭素は存在するのか評価することにより,硫化水素の起源を明らかにする。 本研究申請時,青森県下北半島に位置する陸奥燧岳地熱探査地域(大赤川流域,小赤川流域)を研究対象としていた。陸奥燧岳地熱探査地域では,申請以前から調査研究を実施しており,本研究で採取予定の湧水が存在していた。しかしながら,2021年8月に発生した青森県下北豪雨災害により大赤川流域,小赤川流域ともに斜面崩壊や林道崩落,さらに小赤川では橋まで崩落する事態が発生した。結果として,当初予定していた研究対象地域である陸奥燧岳地熱探査地域から青森県北八甲田火山群地域に変更を余儀なくされた。そして,2021年度は,新たな研究対象地域である青森県北八甲田火山群地域において,硫化水素を含んでいる低温湧水の探索から実施し,それらを発見し,試料採取,分析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は,研究対象地域としていた陸奥燧岳地熱探査地域(大赤川流域,小赤川流域)が,8月に発生した青森県下北豪雨災害により大赤川流域,小赤川流域ともに斜面崩壊や林道崩落,さらに小赤川では橋まで崩落する事態が発生したため,陸奥燧岳地熱探査地域から青森県北八甲田火山群周辺地域に研究対象地域を変更した。初めに,北八甲田火山群周辺地域において,硫化水素を含んでいる低温湧水の探索のため,国道103から国道394周辺域,さらに駒込川水系においてフィールド調査を実施した。フィールド調査では約30地点において湧水や沢水の試料を採取し,また,現地で水温,pH,電気伝導率等の計測を実施した。そして,硫化水素を含む20℃未満の湧水や20℃前後の湧水の存在を確認した。その一つは,溶岩流の岩盤の間隙から流出している湧水であり,もう一つは堆積物中から流出している湧水である。採取した湧水の試料は,微生物硫酸還元反応が起きているのかどうか評価するために,硫酸イオンの安定同位体比分析を行った。また,硫酸還元微生物層は存在するのかどうか検討するために,2021年度は溶岩流の岩盤の間隙から流出している湧水を対象に蛍光顕微鏡を用いた微生物細胞の観察,全菌計数,16S rRNA遺伝子に基づく微生物群集組成解析を行った。次に,微生物硫酸還元反応に必要な有効エネルギー解析のために必要な化学種の分析を行った。そして,微生物硫酸還元反応で用いられる有機酸等を生成する有機態炭素が存在するのかどうか明らかにするために,全有機体炭素計を用いて水質分析を行った。以上,研究対象地域の変更を余儀なくされたが,硫化水素を含む低温湧水について研究を実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では地熱資源探査地域において硫化水素を含む低温湧水について,1)微生物硫酸還元反応が生じた地下水が流出しているのか,2)硫酸還元微生物相は存在するのか,3)微生物硫酸還元反応に必要な有効エネルギーは存在するのか,4)湧水流出域に有機酸や水素を生成する有機態炭素は存在するのか評価することにより,硫化水素の起源を明らかにすることを目的としている。その目的達成のために,一般的に地熱資源探査地域で認められる岩盤や堆積物の間隙から流出している低温湧水の比較検討を試みる。2021年度は,8月に発生した下北豪雨災害により申請時に計画していた陸奥燧岳地熱探査地域におけるフィールド調査を断念し,北八甲田火山群周辺地域を新たな研究対象とした。北八甲田火山群において,当初想定していた岩盤や堆積物の間隙から流出している硫化水素を含んでいる低温湧水を見出した。本研究で実施する3)の有効エネルギー解析はpHの値にも依存しており,微生物硫酸還元反応に必要な有効エネルギー解析結果からは,十分な有効エネルギーが存在することが示唆された。2022年度は,2021年度に引き続き硫化水素を含む低温湧水の探索を継続する。また,1)の微生物硫酸還元反応が生じた地下水が流出しているのかどうか評価するための硫酸イオンの安定同位体比分析を2022年度も2021年度に引き続き行う。2)の硫酸還元微生物相は存在するのか明らかにするために,2021年度は岩盤の間隙から流出する低温湧水を対象に実施したことから2022年度は堆積物の間隙から流出している低温湧水を対象に実施する。4)の湧水流出域に有機酸や水素を生成する有機態炭素は存在するのかについては溶存有機炭素の分析を2022年度も2021年度に引き続き行う。
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[Presentation] Hydrogeochemical evolution mechanisms of groundwater in the Semarang Coastal Zone, Java Island, Indonesia2021
Author(s)
Maria, R., Rusydi, A., Onodera, S., Saito, M., Ioka, S., Delimon, R., Purwoko, W., Sukmayadi, D. and Hendarmawan, H.
Organizer
Japan Geoscience Union Meeting 2021