2021 Fiscal Year Annual Research Report
都市廃棄物発電の高効率化を図るダイレクト廃棄物燃料電池の開発
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21H03661
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
日比野 高士 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10238321)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 都市ゴミ / 再資源化 / エネルギー / 燃料電池 / 触媒 / 脱炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市固形廃棄物の資源化は、最先端廃棄物処理工学において大きな注目を集めている。その重要性を強調する最近の動向として、高効率かつ低コストのエネルギー資源として廃棄物を利用することが挙げられる。
本研究では、800°Cの温度でバイオマス、樹脂、プラスチック、および食品廃棄物のモデル化合物を燃料として直接使用する、廃棄物から電気エネルギーへの燃料電池について報告する。酸化鉄(Fe2O3)はスクリーニング試験した遷移金属酸化物の中で、アノード反応に対して最高の触媒活性を示した。(これらの触媒が無い場合には、発電特性が低くまた持続的な放電が困難であった。)Fe2O3は開回路状態で熱分解ガスまたは固体燃料によってFeOに還元され、約-1 V程度の電位を発生したが、その後の放電によって初期の酸化状態へと徐々に再酸化された。しかしながら、炭素残渣と二酸化炭素とのガス化反応、すなわち、ブドゥアール反応が放電中に進行することによって、FeOの再酸化を抑制することが見出された。また、セルの発電性能は試験した固体燃料成分の量と種類に大きく依存した。とりわけ、ポリエチレンテレフタレート(PET)では0.57 W cm-2の最高電力密度、リグニンでは0.83 Wh g-1(リグニン)の最高エネルギー密度をそれぞれ得ることができた。この燃料電池のその他に見出された特徴として、1) 固体燃料の有機成分がセルの放電によってほぼ完全に消費されることと、2) 固体燃料をバッチモードと自由落下モードの両方で供給できることが挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以前の廃棄物-空気燃料電池では0.1 W cm-2以下の出力密度しか得られなかったが、本研究の電池ではポリエチレンテレフタレートで0.57 W cm-2、リグニンで0.83 Wh g-1(リグニン)をそれぞれ発揮した。加えて、固体燃料の有機成分がセルの放電によってほぼ完全に消費されたことと、および固体燃料をバッチモードだけでなく自由落下モードでも供給できたことである。これらの結果は当初計画していた目標値を上回っており、次年度以降の応用研究に大きな弾みをつける成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は都市固形廃棄物のうち、バイオマス廃棄物に特化したエネルギー回収の応用を実施する。いくつかの研究では、発酵プロセスを通じて雑草からバイオガスを生成する技術が検討されているが、プロセスの複雑さとエネルギー消費の点で改善を必要とする。また、雑草から直接電気を生成するアプローチとしてレドックスフロー燃料電池および固体酸燃料電池も提案されているが、草燃料の酸化反応に対するアノードの触媒活性が低く、不十分な発電特性である。
固体酸化物形燃料電池(SOFC)は動作温度が高いため、燃料電池の中で最も高いエネルギー変換効率を示す。 さらに、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、含酸素化合物(アルコール、エーテル、アルデヒド、およびケトン)、脂肪族および芳香族炭化水素、固体炭素などのさまざまな燃料を柔軟に使用することもできる。SOFCのもう一つの利点はセル運転中に生成される水蒸気(H2O)や二酸化炭素(CO2)と残留物の二次改質反応が進行することであり、これによってバイオマスの燃料利用率を増やすこともできる。
本研究では、750から850℃の温度範囲で雑草廃棄物を燃料として直接使用するSOFCを開発する。最初に、アノード触媒を草燃料の酸化反応のために最適化する。 アノードの触媒活性をH2O、CO2およびO2による改質反応に関連付けて反応機構を説明する。 最適化した燃料電池の性能を定電位や定電流分極およびインピーダンス法によって評価する。 イネ科、キク科、マメ科に属する草種の燃料特性を、バイオマス成分、特にセルロースとリグニンの燃料特性と比較する。廃燃料の供給について、バッチモードと連続モードの両方で比較する。 最後に、セル操作後に残留物と灰の形態を観察する。
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Research Products
(2 results)