2021 Fiscal Year Annual Research Report
Production of cold ion plasma for studying dynamics of high quality beams
Project/Area Number |
21H03737
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊藤 清一 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 助教 (70335719)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 荷電粒子ビーム / イオンプラズマ / 空間電荷効果 / バッファガス冷却 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は,線径ポールトラップに捕捉したイオンプラズマを低温のヘリウムガスで冷却することで空間電荷効果に起因する集団振動が発現するのに十分な低温・高密度状態にし,これを用いて集団振動がイオンプラズマ(ビーム)の安定性に与える影響を実験的に調査することである.本年度は超高真空に到達できる真空容器と排気系,4 Kまでの冷却が可能な2段GM型クライオスタット,クライオスタットによる冷却可能な線形ポールトラップの製作と組み立てを行った.またそれぞれの試験を行い,以下の結果を得た. 1) 真空容器に真空排気系を取り付け真空排気試験を行った.ベーキングなしでも1月程度排気することで 10の-8乗 Pa 台の超高真空を得ることを確認した.実験においては残留ガスを極力減らす必要がある.真空を良くするには150度程度のベーキングが有効であるが,GM冷凍機ヘッドは熱に弱くベーキングできない.ベーキングなしでこの程度の真空を得られたのは本実験にとって重要である. 2) 2段GMクライオスタットの冷却・温度制御試験を行った.GM冷凍機のヘッド部分が仕様通り 4 K まで冷却できることを確認した.またヒーターにフィードバック制御をかけることにより 4 K から室温までの間で安定して温度を調整できることを確認した.ヘリウムガスの温度を広い範囲で制御できる可能性がある. 3) クライオスタットの1段目を利用することで,100 K 程度まで冷却可能な線形ポールトラップを設計・製作した.一般に絶縁体は熱度伝導率が低いため,電極の温度を下げることは難しい.今回は電極の支持材として窒化アルミを用いることで十分な熱伝導を確保した.一方でトラップ全体としては熱の流入を減らす必要がある.トラップのマウントには熱伝導率が非常に小さくかつ100 K 程度での仕様実績もあり,ガス放出も少ない樹脂材料を用いた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定では,R3 年度中に装置やイオントラップの製作・組み立て・設置を行い,イオントラップによるイオン捕捉実験まで行う予定であった.しかしコロナ禍や世界的な半導体不足により各装置の製作,納品が予定通りに行われなかった.そのため,現在のところ各部品の単体での性能試験しか行えていない.ただし,それぞれぞの性能は本研究を実施するために十分であることは確認している.また実験に必要な部品・装置はほぼ揃えることができた.R4 年度中旬までにはイオン捕捉とヘリウムガスによる冷却実験を開始できると考えている.当初予定より若干遅れがあるものの,このような状況も想定して多少の余裕を持った研究計画となっている.従って,おおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度の目標は低温でイオン数が多いイオンプラズマを生成する条件を見つけることである.まず,線形ポールトラップを真空容器中に設置してイオン捕捉実験を行い,捕捉可能な最大イオン数,閉じ込め時間などの基礎的な性能を評価する.次に,線形ポールトラップをクライオスタットの一段目に接続してその冷却を試みる.これはイオンプラズマをより効率的に冷却するために必要である.本実験ではArガスから生成したArイオンを用いて実験を行う,従ってArの凝固点である100K程度まで線形ポールトラップの温度を下げる予定である.ただし,線形ポールトラップには給電のための配線が複数接続するのでそれなりの熱流入がある.計算上は100Kに達する予定であるが,これを実験で確かめる.場合によっては給電の配線を細くする,材質を変更するなどの対応が必要になる.イオンプラズマの冷却を確認するには,イオンプラズマの断面方向分布を測定するのが有効である.本年度前半にはそのための画像計測装置の整備も行う.ここまでを9月をめどに行う. 本年度の後半は,クライオスタットにより冷却したHeガスを導入してイオンプラズマの冷却実験を行う.バッファガス冷却法は冷たいHeガスとイオンプラズマを衝突させることでイオンプラズマを冷却する手法である.従って導入するHeガスの温度が低く,その圧力が高いほどイオンプラズマの温度は下がる.しかし,Heガスを冷却するためにクライオスタットの温度を下げすぎると,Arガスがクライオスタットに氷着してしまいイオンプラズマ生成の効率が低下する.また,ガス圧が高すぎるとイオンプラズマの挙動に対して空間電荷効果よりも衝突の効果が支配的になってしまう.従って適切な温度とガス圧が存在するはずで,これを探索する.
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