2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H03746
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
玉作 賢治 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, チームリーダー (30300883)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | X線非線形光学 / X線発光分光器 / 共鳴非弾性X線散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
試料からの散乱X線を高効率で分光できる大口径の走査型発光分光器を開発した。この装置には3枚の直径100mmの球面湾曲結晶を装着でき、これまでより3倍の効率良く測定できる。結晶ごとにブラッグ角、反射方向、検出器までの距離を調整できるようになっている。また、試料-球面湾曲結晶-検出器の光路を真空排気することで、空気による吸収や散乱を最小限にできるようになっている。この走査型発光分光器を用いて、マンガン化合物にて非線形な共鳴非弾性X線散乱の測定を行い、設計通りの性能を発揮していることを確認した。そして、マンガン化合物の2次元スペクトルについて、その一部を測定し、スピン状態を反映すると思われるピークを確認した。しかし、その強度や光子エネルギーは予想とは違うことが判明した。この原因については、全2次元スペクトルを測定する必要がある。さらに、同じ物質を用いて、異なる励起-発光過程での非弾性散乱スペクトルを測定し、電子状態を見るために適したものを検討するための基礎データを取得した。このデータに関しては、次回以降の測定にフィードバックできるよう解析中である。一方で、今年度の実験を通じて、試料をX線レーザーの集光点に噴射したときの飛沫がX線用の窓に付着し、励起強度が不安定になるという問題点が判明した。これを防ぐために、窓の前でフィルムを連続的に送り続ける装置の設計を行った。この装置は次年度に製作し発光分光器に装着する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の推進に必須の大口径発光分光器本体の開発は予定通り完了した。試料周りに付加的な装置を取り付ければ、問題なく測定が行える。また、本装置を用いて非線形な共鳴非弾性X線散乱の測定も行い、解析に耐えるデータも取得できている。
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Strategy for Future Research Activity |
大口径発光分光器の試料周りを改良し、測定条件を安定化する。この改良で非線形な共鳴非弾性X線散乱の全2次元スペクトルが、ビームタイム内に測定できると期待される。得られた2次元スペクトルを解析し、理論計算と比較を行う。また、前年度調べた異なる励起-発光過程についても、2次元スペクトルを測定し、最適な測定条件を明らかにする。これらが順調に進めば、別のスピン状態をとるマンガン化合物での測定も行う。
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