2022 Fiscal Year Annual Research Report
イオンビーム加工に基づく光閉じ込め構造型完全暗黒シート材料の開発
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21H03753
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
雨宮 邦招 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (60361531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越川 博 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹技術員 (00354936)
清水 雄平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (90828005)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 暗黒シート / 平面黒体装置 / 黒体 / 放射率 / 極低反射率 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、暗黒シートの可視域における低反射性能の改善を図った。昨年度までの赤外線領域での検討結果に基づき、従来の暗黒シートの性能が制限されてきた原因が、カーボンブラック(CB)顔料の凝集体によるMie後方散乱であることを理論的にも実験的にも突き止めた。そこで、CB顔料に依らずに黒い素材を探索したところ、カシューオイル樹脂の黒色塗料にたどり着いた。うるしに似た成分からなり、鉄と錯体を作ることでポリマー自体が黒くなっていて、Mie後方散乱の原因となる顔料粒子が存在しない。このカシューオイル黒色樹脂に光閉じ込め構造を形成することで、ぎらつき(鏡面反射)もくすみ(散乱反射)も極めて少ない、深い黒を実現できた。 得られた「至高の暗黒シート」の半球反射率は0.02 %未満(光吸収率99.98 %以上)であり、これまでの触れる超黒素材と比べると1~2桁も低い反射率である。また、これまで世界一黒いとされてきた配向カーボンナノチューブと比べてもそん色ない黒さである。この至高の暗黒シートは、明るい場所でも沈む圧倒的な黒さを実現でき、背景の映り込みを防止できるため、視覚表現にこれまでになく高いコントラストを提供可能である。 また、カシューオイル黒色樹脂ほどではないものの、カーボンブラック顔料を用いない複合組成で低散乱な黒色基材が他にいくつか見つかっている。必要な反射率や用途に応じて基材の選択肢があり、光閉じ込め構造を作製できるのも、今回の新しい暗黒シート技術の特長である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間全体の性能目標(可視域で半球反射率0.1 %未満)に対し、得られた暗黒シートの反射率は0.02 %未満(光吸収率99.98 %以上)であり、1年前倒しで達成できた。成果はScience Advances誌に掲載され、プレスリリースも行った結果、多くのメディアに取り上げられた。 一方、サンプルサイズは現状、最大で100 mm x 100 mmが得られているが、実用上はさらに大きなサイズが求められており、今後改善の余地がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、加工法や製造法も改善してより大面積化を図り、実用性も高めていく。 また、実用上の用途に合わせた付加性能(耐久性等)を有し、かつ低散乱な黒色基材の探索を継続し、光閉じ込め構造の適用を試みる。
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