2021 Fiscal Year Annual Research Report
Mitochondria-mediated blood flow mechanosensing in endothelial cells
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21H03791
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 希美子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (00323618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 譲二 獨協医科大学, 医学部, 特任教授 (20159528)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / せん断応力 / ミトコンドリア / ATP / メカノバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究計画に沿い、以下の項目について新たな結果を得た。
1) ミトコンドリアにおけるATP濃度変化のリアルタイム計測:ミトコンドリアを標識するATP感受性の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)プローブを用いてミトコンドリアATPの濃度変化のリアルタイム計測を行った。アデノウイルスベクターを用いて培養ヒト肺動脈内皮細胞(HPAECs)に遺伝子を導入し、HPAECsのミトコンドリアにATPプローブが発現することを、ミトコンドリアの特異的マーカーであるMitoTrackerと共局在することにより確認した。 2) 力学的刺激に伴うミトコンドリアATP産生機構の解析:ATPプローブを発現したHPAECsに流れ負荷装置で剪断応力を、伸展刺激装置や低浸透圧で伸展張力を加えた時のミトコンドリアATP濃度の変化を解析した。ATP濃度は剪断応力刺激で増大する一方、伸展張力刺激で減少した。電子伝達系の阻害剤(oligomycin, rotenone, CCCP)と解糖系の阻害剤(2-deoxyglucose, indoacetic acid, NaF)の効果を比較・検討したところ、剪断応力によるATP増大には、電子伝達系の働きが主である事が確認された。また、細胞内のプロトンの動態をpH指示薬SNARFで観察したところ、剪断応力により、細胞質内が酸性化することを見出した。更に、ミトコンドリア酸素活性を閉鎖系で測定可能な分析装置(Oxygraph-2k)で定量したところ、細胞膜コレステロールの多寡により酸素消費量が変化し、剪断応力依存的なミトコンドリアATP産生及び、細胞質内pH変化に重要な役割を果たすことが明らかになった。
以上の結果から、剪断応力により酸素消費量が増大すると同時に電子伝達系が活性化し、ミトコンドリア膜にプロトンの濃度勾配が発生することで、ATPが産生する分子機構の存在が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記載した研究実施計画の検討項目を実行し、順調に結果を得ることができている為。
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Strategy for Future Research Activity |
血管内皮細胞のメカノセンシング機構におけるミトコンドリアの働きを解明する為に以下の研究を推進する。
1. ATP放出反応を介したカルシウム・シグナリングの解析:コレステロール、細胞膜コレステロールを除去する働きを持つmethyl-β-cyclodextrin、コレステロール酸化酵素、ベンジルアルコール、多価不飽和脂肪酸などで形質膜の脂質相や流動性を変化させたときのカベオラからのATP放出反応とカルシウム反応を解析する。細胞外に放出されるATPは独自に開発したイメージング法で測定する。これは遺伝子工学的に独自に作製したビオチン・ルシフェラーゼ蛋白を細胞膜に結合させ、ATP が誘発するルシフェリン・ルシフェラーゼ反応で生じる化学発光を共焦点レーザ顕微鏡と高感度冷却型CCDカメラで測定する。また、力学刺激による細胞内のATP濃度変化については、ミトコンドリアや細胞膜に局在するATPプローブを用いて解析する。細胞外に放出したATPが惹起するP2X4チャネルを介したカルシウム流入反応はカルシウム感受性プローブと蛍光測光顕微鏡でライブ観察する。
2. ミトコンドリアと細胞膜の立体構造解析:細胞形質膜、脂質ミクロドメイン・カベオラとミトコンドリア膜の立体構造の相関について、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により明らかにする。予備的なヒト肺動脈内皮細胞のTEM観察では、ミトコンドリアの先端が細胞膜カベオラに接触している画像が多数得られた。カベオラとミトコンドリアの構造が力学的刺激によりどの様に変化するか解析する。更に、生細胞のミトコンドリアの構造を超解像蛍光顕微鏡で観察する。ミトコンドリアのクリステを特異的にラベルする蛍光プローブ(Mito PB Yellow)を基本使用する。予備的な検討でクリステ構造を確認した。力学的刺激に伴うミトコンドリアの構造変化とATP産生能との相関を生細胞で検討する。
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Research Products
(10 results)