2021 Fiscal Year Annual Research Report
超高磁場MRによる脳内代謝物計測法の開発と病態フィンガープリントの解明
Project/Area Number |
21H03806
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 知久 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30321607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤本 伸克 京都大学, 医学研究科, 教授 (90397547)
吉原 雄二郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (00529464)
赤坂 太 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (00883224)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超高磁場 / MRスペクトロスコピー / 病態バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内の重要な機能拠点としては、前部帯状回(ACC)、後部帯状回(PCC)などがあげられる。これらの領域を対象として短エコー時間のSTEAM撮像法とSPECIAL撮像法の撮像最適化を実施して。撮像時間5-7分でデータ収集を可能とした。加えて、超高地場7テスラの磁場強度を活用して、抑制性神経伝達物質であるGABAや酸化ストレスの指標となるグルタチオンやタウリンを安定して計測可能とした。ただし、病態解析の際、MRS撮像法による影響の有無を検討する必要がある。そこで、ACCを対象に、STEAM撮像法とSPECIAL撮像法の両方でうつ病患者群と健常対象者とを対比する研究を実施して、初期検討結果を2022年国際磁気共鳴学会で発表した(ISMRM2022:3077)。並行して、PCCを対象に認知症例の計測も進めている。ただし、これらの計測値は巨大分子の影響を受けることが知られている。その影響を排除するため、STEAM撮像法用の巨大分子モデルを作成して、その影響を取り除く研究を進めている。 これに加えて、脳機能を観察する上で重要なグルコースを計測することで脳活動・糖代謝の計測を進めた。通常MRSで計測する範囲(0.2 - 4 ppm)とは異なり、自由水を起点として反対側の計測範囲である5.23 ppmのグルコースピークを対象として、GABAと同程度の濃度である約1 mMのピークを計測可能とした(ISMRM2022: 4365)。当初、STEAM撮像法で計測を行っていたが、semi-LASER撮像法の方が、計測の安定性がより高いことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ACCを対象に、STEAM撮像法・SPECIAL撮像法の両方で計測を行い、うつ病患者群(8名)と健常対象者(13名)とを対比した研究では、全計測者のうち、%SD(ノイズレベル)が20以下と安定して計測できたのは、順にGABAで90.5%・76.2%、グルタミンで100%・95.2%、グルタチオンとタウリンさらにグルタミン酸、イノシトール、NAA、コリン、クレアチンではともに100%であり、STEAM撮像法に対してSPECIAL撮像法でやや計測が不安定なことが判明した。両撮像法でともに、脳内化学物質の全てでうつ病患者の方が低値であったが、有意差を認めたのはタウリンのみであった。 巨大分子モデルの作成では、MRS計測の最初に反転パルスを使用することで、縦緩和時間が非常に短い巨大分子の信号を回復させるとともに脳内化学物質の信号を抑える計測を行った。これは、7テスラ以上の超高磁場での、STEAM撮像法以外で報告されている結果とほぼ同等であり、詳細な解析を進めている。グルコースの計測では、健常被験者20人を対象とした計測を完了して、semi-LASERとshort-TE STEAMとを撮像して比較を行った結果、前者の方が計測の安定性がより高いことを報告した。 しかし、COVID-19感染症の蔓延により、2D-MRSI計測法とグルタミン(Glu)CEST計測法の研究開発が遅延したため、延期申請をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19感染症の蔓延状況に対応しながらも、うつ病研究と認知症研究の対象者登録を増加させる。同時に巨大分子モデルの作成を進めることで、その影響を受ける脳内化学物質の定量精度を向上させるとともに、病態マーカーを探索する。加えて、延期申請を行った2D-MRSI計測法とGlu-CEST計測法の研究開発を進める。 中でも比較的少量の脳内化学物質の計測では、巨大分子が定量値に大きな影響を与える。若年健常者と高齢健常者で巨大分子の量に違いがあるという報告があるため、それぞれで10人以上のデータを収集して、平均の巨大分子モデルを作成する。具体的には、収集されたデータにpseduo-Voigt関数でのfittingを行い、残存する脳内化学物質のピークを除去するとともに、個別の巨大分子ピークの化学シフト量とピークサイズの解析を進める。 グルコースのMRSデータの解析では、水抑制後にも残存する水ピークが影響するため、解析パラメータであるPPMGAP他を活用して、その影響を抑えるための手法を開発する。
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Research Products
(2 results)